施政方針(令和7年第1回笠間市議会定例会) 令和7年2月26日
はじめに(合併20周年について)
平成18年、3つの市町が思いを寄せ誕生した「笠間市」は、令和7年度に、20周年という節目を迎えます。
合併に至るまでには、様々な難題を乗り越え、多くの方のご苦労とご尽力のうえに、今日の笠間市があることに、改めて感謝を申し上げる次第です。
合併後、行政改革や分権の受け皿づくり等に取り組み、さらに、議会をはじめ、市民の皆様の協力のもと、インフラ整備、産業振興、人材育成、保健・福祉・医療の充実といった様々な政策を進めてまいりました。
一方、本市の人口は、合併後約1万人が減少し、今後も高齢化の進展とともに、人口減少は進んでいきます。公共施設の老朽化や更なる財源・人材の確保など、避けて通ることができない課題もあり、大変厳しい状況になってまいります。
そのような中において、これまで先人が築き上げてきた文化や歴史、そして志を、しっかりと未来へつないでいく責任が、私たちにはあります。
これからの10年、20年先を見据え、人口減少を前提とした次のステージを目指して、笠間市の力を結集し、限りない可能性を大きく育てながら、躍進する自治体として築き上げてまいります。
なお、20周年を迎えるにあたり、合併記念事業として、全国忠臣蔵サミットの本市開催や、民間との記念セレモニーを兼ねた音楽イベントなどを予定しており、市民の皆さんとともに、20周年を盛り上げていきたいと思います。
施政方針について(市政を取り巻く状況)
石破総理は今国会の所信表明演説で、これまでの歴史において目指してきた「強い・豊かな日本」に加えて、一人一人が主導する「楽しい日本」、今日より明日はよくなると実感できる、活力ある国家を目指すとしており、特に「令和の日本列島改造」の具体化といった、地方に対する視点が強く押し出されています。これは、本市が令和5年度から継続して掲げている「未来に向けた笠間市づくり」の方向性に一致しており、後押しになるものと捉えています。
一方で、実現に向けては、不安定な国際情勢や気候変動問題といった世界規模の課題に加え、国内では加速する人口減少、大都市への人口集中が地方都市に深刻な影響を及ぼしています。これらに対する対策は多岐にわたり、また、教育費の負担軽減や賃金の引き上げ策など、国での議論の動向も注視しながら、柔軟に対応してまいります。
昨年元日の能登半島地震から、間もなく1年2カ月になります。本市でも、地震発生直後から被災地支援のため、職員を派遣し、現在も能登町において災害支援業務にあたっております。一日も早い復興をお祈り申し上げるとともに、必要に応じて支援を継続してまいります。
近年、頻発する大規模地震や、異常気象がもたらす局地的な豪雨などの自然災害を踏まえ、国においては、新たな災害時の司令塔となる「防災庁」の設置を令和8年度を目途に、準備を進めています。
本市においても、拠点避難所の追加指定とともに、昨年8月に、災害時の被災者支援や避難所運営などを行う「災害時支援員」制度を発足したところであり、引き続き、防災力の強化に取り組んでまいります。
次に、人口動態についてです。
昨年、前年比で約86万人が減少し、1968年の調査開始以降、過去最大の減少となった総人口は、今月20日に発表された最新の人口推計においても、2月1日現在、前年同月に比べて、57万人の減少とされております。
また、昨年の日本全体の出生数は、統計開始後初めて70万人を割り込むことが見込まれており、将来推計を上回るスピードで、人口減少と少子化が進展しています。
本市においては、令和6年(1月~12月)の出生数が、初めて300人を割り込む状況となっており、常住人口調査では、自然動態で807名の減少となっております。
一方で、社会動態では191名の増加となり、令和4年から、転入者数が転出者数を上回る、転入超過の傾向が続いております。子育て世代の転入など、一貫して進めてきた教育、保健・福祉、都市基盤などの、総合的な対策の効果が現れてきているものと考えておりますが、この流れを確実にしていくためにも、引き続き、切れ目のない支援、質の向上、さらには、事業所やまちづくりにおける人材確保策など、施策の強化・充実を図ってまいります。
本年は、いわゆる団塊の世代がすべて75歳以上となり、独居高齢者世帯も増え続けております。このような状況を踏まえ、移動や買物など日常生活の利便性を高めるための生活環境づくりや、昨今の社会情勢に対応した防犯対策、人生の終活支援など、安心な暮らしにつながる対策を強化してまいります。
また、人材確保はあらゆる分野で喫緊の課題となっています。企業だけでなく、行政においても、安定したサービスを提供するためには、これまでの業務手法や事業そのものの変革が必要となります。そのため、デジタル技術の活用強化をはじめ、外国人材を含む、まち全体でのダイバーシティ経営の推進など、新たな可能性を検討し、積極的に推進してまいります。
今月、県が発表した「水戸保健医療圏における病院再編の方針」において、県立中央病院とこども病院の統合強化が示されました。これは、県央・県北地域での高度急性期医療体制の面から必要であると認識しております。
しかし、中央病院が立地する本市においては、再編に伴う保健医療や地域経済への影響が危惧されますので、先日、畑岡議長とともに、茨城県知事に対し、再編に関する本市の懸念事項について要望を申し入れたところです。
今後も引き続き、県と連携し、地域の医療体制の継続を図ってまいります。
令和7年度予算の概要
まず、今後の財政状況の見通しとしましては、社会保障関連経費の増加傾向が続くことに加えて、人件費や、物価高騰による物件費の増加が見込まれる中で、計画的な公共施設の整備等が必要な状況であり、厳しい財政状況が想定されます。
このような状況において、令和7年度の予算編成につきましては、市税等の収納率向上や、ふるさと納税、企業版ふるさと納税のさらなる推進など、財源確保策の強化をはじめ、実施する事業の全体での位置づけや必要性を明確にし、事業スクラップや、従来の業務のあり方を大胆に見直したうえで、市の重点課題を積極的に推進することを方針として、予算編成を進めました。
歳入につきましては、市税は、前年度の定額減税による減収分の足し戻しや、賃金の上昇等による所得割の増のほか、新築家屋の増や企業誘致に伴う固定資産税の増を見込み、市税全体では、前年度比で約8.1パーセントの増としております。
地方交付税につきましては、国の地方財政計画における地方交付税総額が、前年度と比較して増となる見込みでありますが、市税の伸びなどを考慮し、前年度比で約7.2パーセントの減としております。
歳出につきましては、人事院勧告に準じて行う給与改定により、人件費が前年度比で約4.5パーセントの増、物価高騰などにより、物件費が前年度比で約11.2パーセントの増、障害者自立支援給付費や児童手当の増などにより、扶助費が前年度比で約6.6パーセントの増など、経費の増要因がある中で、市の重点プロジェクトの実現のために必要な予算を計上しております。
その結果、令和7年度の一般会計予算は、総額352億8千万円で、前年度と比較しますと12億2千万円、率にして約3.6パーセントの増となります。
特別会計予算につきましては、国民健康保険特別会計をはじめとする4会計で、予算総額は166億9千2百万円であります。
企業会計予算につきましては、病院事業会計をはじめとする4会計で、予算総額は82億8千576万7千円であります。
なお、一般会計予算、特別会計予算及び企業会計予算を合わせた、本市の令和7年度の予算総額は602億5千776万7千円で、前年度と比較すると、8億6千583万円、率にして約1.5パーセントの増となります。
令和7年度の重点プロジェクト
重点プロジェクトの概要
1.笠間まるごと「子育て都市」宣言プロジェクト ステージ3
まず、1つ目は「笠間まるごと「子育て都市」宣言プロジェクト ステージ3」として、他分野の予算を圧縮する中、子ども・子育て関連予算は、前年度と比較して1.1倍となる、80億円の事業化を図ってまいります。
主な内容としては、小学校、中学校及び高校進学における、節目の時期に対する給付や支援といった、これまでの施策の継続に加えて、第2子以降の保育料の無償化を新たに実施し、子育て費用負担の軽減策の強化を図ります。
同時に費用負担の軽減だけではなく、母子手帳のデジタル化、妊婦等包括相談支援をはじめとした、きめ細やかなソフト面でのサービスの向上策、教育環境の向上策を強く推進していきます。
本市の子育てに関する施策をさらに推進し、まち全体で子育てを支え合いながら、子ども・子育て都市の実現を目指してまいります。
2.共生社会を支える地域担い手育成プロジェクト
2つ目は、「共生社会を支える地域担い手育成プロジェクト」として、喫緊の課題である人材確保策の強化と、農業や観光といった、地域の特色となっている産業の維持、成長策を展開してまいります。
茨城県全体における外国人材は、昨年6月末現在、全国で10番目となる97,038人であり、前年同月比で13パーセントの増加がみられます。本市においても、同時期で1,202人、11パーセントの増となっていますが、人材確保の観点では、適切に増加を図っていく必要があります。
このような状況を踏まえ、新たに商工課内に相談窓口となる「外国人材支援センター」を設置し、採用手法などに課題を感じている小規模事業者の支援をはじめ、地域における生活相談など、ワンストップによる外国人対応の体制強化と充実を図ってまいります。
また、起業・創業支援、女性活躍応援体制の強化、介護や保育人材の確保支援、さらにはインターンを活用した学生、副業人材の確保策といった、公民連携での取り組みを通して、未来を支えるダイバーシティ経営を推進してまいります。
3.中心地区(友部駅~市役所周辺)まちづくりプロジェクト
3つ目は、「中心地区(友部駅~市役所周辺)まちづくりプロジェクト」として、駅を中心としたエリアに都市機能を集約し、活力あるコンパクトなまちづくりを目指す取り組みを進めてまいります。
合併後20年が経過する中で、総合計画などの都市づくりの計画において、それぞれの地区特性を生かした取り組みを続けながら、友部駅周辺地区を、都市機能の強化を図る地区として位置づけてきました。
人口減少が進む中にあっても、友部地区は、市役所をはじめとする公共施設や駅を中心に、今後のまちづくりを進める上で重要な拠点であり、定住人口と昼間人口の増加を図っていく必要があります。
その再強化策として、友部駅から市役所周辺までの、都市機能誘導区域における無電柱化などのハード整備や、空地や空き店舗等の利活用を推進して、事業所等の誘致活動を展開してまいります。
また、公共施設の老朽化に伴う再編、適正配置計画の改定とともに、若者を誘導するランドマークとなる拠点づくりを公民連携により検討を進め、未来への都市機能の向上を図ってまいります。
主要施策の概要
1.都市基盤の機能向上
まず、都市基盤の機能向上についてです。
市内の渋滞対策として、交通混雑の緩和や通勤・通学時間帯の移動の円滑化に向けて整備を進めております「(仮称)鯉淵南友部線」につきましては、JR常磐線をまたぐ橋梁の詳細設計や用地測量を進めてまいります。
また、住宅開発や商業施設の立地等が活発な旭町地内の混雑緩和に向けては、迂回路となる周辺道路の現道拡幅を行い、通行の利便性向上を図ってまいります。
災害・緊急時の対応強化や市内の交通渋滞緩和として、北関東自動車道とのアクセス向上を図る「笠間パーキングエリア スマートインターチェンジ」の整備につきましては、令和8年度の供用開始を目標に、事業を推進してまいります。
生活道路につきましては、各行政区からの要望を基に優先度を判断し、計画的な整備を進めるとともに、関係機関と連携して通学路の安全点検を実施し、児童の安全確保を講じた、歩道整備に取り組んでまいります。
また、市内道路の維持管理における除草作業については、委託コストの増加や、担い手の減少などの課題が顕在化していることから、新たに、多機能の路面清掃車を導入し、作業の省力化や作業環境の向上、管理コストの縮減を図ってまいります。
市民の憩いの場となる都市公園については、長寿命化計画に基づき、計画的に公園施設の更新を進めます。また、市内の公園や緑地についての活用方針を定め、再編・集約化を含めた適正配置計画の策定を進めてまいります。
市民生活を支える重要インフラである水道事業については、将来の持続的な安定供給に向けて、今月締結した協定に基づく広域連携の枠組みに参加し、水道施設の効率的運用、経営面でのスケールメリットの創出などの議論を進めてまいります。
あわせて、経年劣化が進んでいる老朽管については、AIを活用した管路劣化診断や耐震性のある水道管への布設替えを進め、災害への備えを強化してまいります。
下水道事業においても、ストックマネジメント計画に基づき、経年劣化が進む処理施設や下水管路の計画的な更新を進めるとともに、事業経営の圧迫要因につながる生活排水以外の処理水、いわゆる不明水の特定に向けて、対策を講じてまいります。
2.安心・安全を高める防災・防犯対策の強化
次に、安心・安全を高める防災・防犯対策の強化についてです。
防災対策においては、大規模地震や局地的な豪雨被害などを教訓に、自然災害への備えとして、拠点避難所における簡易ベットや災害用トイレ、組み立て式の貯水槽などの防災資機材、備蓄品の整備を計画的に進めてまいります。
また、令和6年度からの継続事業である、拠点避難所に指定された友部中学校、岩間中学校体育館での空調設備の設置を進め、避難環境の向上を図ってまいります。
災害時の「共助」となる自主防災組織は、昨年度末までに、市内158団体が組織され、組織率は約67パーセントとなっています。さらなる組織の強化に向けて、地域の防災訓練等への活動や、老朽化した資機材の更新に対する支援を行い、地域の防災力を高めてまいります。
消防・救急体制の強靭化においては、消防職員の計画的な人員確保や予防業務のDXの推進を図るとともに、消防団については、団員の確保や負担軽減、分団の統合再編など、審議会において議論を進めており、答申を受け次第、スピード感をもって改善に取り組んでまいります。
次に防犯対策であります。
県が公表した、令和6年における市内の刑法犯罪認知件数は513件で、令和5年より増加していますが、住宅侵入窃盗件数は31件減少しています。
しかしながら、全国的に多発する、SNSなどを利用した強盗事件によって、日常的に市民生活への不安が高まっていることから、昨年に続いて、住宅等への防犯対策として、防犯用品の購入や設置費用などに対する補助事業を実施し、犯罪被害の防止と市民の防犯意識の向上を図ってまいります。
また、市内への防犯カメラの設置や、行政区への防犯灯設置に対する補助を継続し、安心・安全な生活環境を整えてまいります。
3.脱炭素先進都市の形成・循環型地域づくりの促進
次に、脱炭素先進都市の形成と、循環型地域づくりの促進です。
脱炭素社会の実現に向けて、本市はこれまで、ゼロカーボンシティ宣言や連携協定に基づく体制の構築、公共施設への太陽光発電の導入のほか、市民の環境意識や行動変容を促すための取り組みを進めてまいりました。
引き続き、太陽光発電・蓄電システムの設置支援や、公用車におけるEV(イーブイ)車の導入、再配達削減事業による二酸化炭素の排出抑制を進めるとともに、地域課題の解決につながる、国の先行地域の選定に向けてチャレンジし、脱炭素への取り組みを加速させ、脱炭素先進都市の形成を目指してまいります。
持続可能な循環型社会の構築に向けては、市民や市内事業者が一体となって、ごみの減量化や4R推進、廃棄物の適正処理について連携して取り組むとともに、民間事業者との連携協定に基づき、ペットボトルの水平リサイクル事業や、廃食用油の回収及びリサイクル事業など、市民のリサイクル意識の向上と普及啓発活動を実施してまいります。
新環境センターの整備については、昨今の物価高を背景に、建設・運営コストが大幅に上昇しており、将来の財政に与える影響も大きくなっております。こうした情勢を踏まえ、現計画である「新設」に、「延命化」や「民間委託」といった手法を加え、本市にとって最適な整備手法について再検討し、持続可能なごみ処理施設の実現を目指してまいります。
新たなし尿・浄化槽汚泥処理施設の整備については、茨城県央環境衛生組合において、し尿・浄化槽汚泥の適正処理とともに、新施設の計画策定に向けて、検討を進めてまいります。
4.企業誘致の推進・立地促進に向けた強化
次に、企業誘致の推進および立地促進に向けた強化です。
企業立地につきましては、茨城中央工業団地(笠間地区)において、これまでに11社の製造・物流企業が操業を開始しており、昨年も、新たに10ヘクタールの製造業の進出が決定したほか、団地周辺において、物流センター2社が開業するなど、県内の好調な企業立地にけん引されるように、多くの企業進出がみられており、雇用や税収面での相乗効果が期待されるところであります。
令和7年度においても、茨城中央工業団地(笠間地区)の残りの区画約18ヘクタールをはじめ、畜産試験場跡地への誘致促進を図ってまいります。新たな受け皿となる安居工業地域においては、前倒しで追加補正された国の交付金を活用して、幹線道路等の基盤整備を加速させ、地元地権者会と協議を進めながら、県と連携し誘致活動に取り組んでまいります。
5.切れ目のないこども・子育て支援と強化
次に、切れ目のないこども・子育て支援と強化についてです。
昨年度、母子保健と児童福祉を一体化した「こども家庭センター」機能の組織を編成し、妊産婦や子育て世帯等への相談支援を包括的に実施してきました。
さらなる機能強化に向けて、令和7年度は、電子母子手帳を導入し、母子保健分野のDX化を進めてまいります。個人のスマートフォン等からこどもの成長記録を一元的に管理できるほか、子育て世代が必要とする情報を適切な時期に通知するなど、利便性の向上に努めてまいります。
また、ひとり親家庭の自立支援に向けた、就労相談や支援プログラムによる伴走型のサポートや、子どもの発達やライフステージに応じた、専門性の高い相談対応、多職種や関係機関との効率的な連携による、ひとり一人の発達に応じた支援のほか、就労状況にかかわらず、保育施設が利用できる「こども誰でも通園制度」の利用施設の友部・岩間地区への拡大などを充実してまいります。
6.多様化する福祉ニーズへの支援
次に、多様化する福祉ニーズへの支援についてです。
近年、地域におけるつながりが希薄化し、一人暮らしの高齢者の増加や児童虐待などの課題が深刻化するなど、地域を支える民生委員や児童委員が担う役割の重要性が増しております。令和7年度に、委員の一斉改選を迎えるにあたり、人材確保を図り、活動しやすい環境整備、地域の支援体制の強化に努めてまいります。
次に、DV被害など女性をめぐる問題に対する支援につきましては、昨年から継続して、女性相談支援員による相談対応を行うとともに、新たに一時避難場所となる「民間シェルター」を設置し、要保護性・緊急性のある相談者に対する安全確保のための支援、生活の再建に向けた支援を行ってまいります。
次に、地域において生きづらさを抱えながら生活している方に対する、県立こころの医療センターと連携した支援体制の強化です。
専門職チームによる自宅訪問型ひきこもりサポート事業では、ひきこもり状態の長期化により、気力の低下とともに社会復帰が難しくなっていることを踏まえ、新たに、市内中学校との連携を強化し、情報共有による早期支援に向けた体制を構築してまいります。
高齢者福祉においては、高齢者のみの世帯や一人暮らしの高齢者世帯が増加する状況の中、頼れる親族がなく、将来について不安を抱える、身寄りのいない高齢者に対する総合的な支援を始めてまいります。
「日常的な相談や見守り」から、「入院時の身元保証」、「葬儀・納骨の支援」まで、様々なニーズに応じて、一体的に支援する窓口として「かさま安心サポートセンター」を市社会福祉協議会内に設置し、安心して日常生活を継続できる環境を整えてまいります。
7.儲かる地域の産業づくり・担い手確保の強化
次に、儲かる地域の産業づくりと、担い手確保の強化についてです。
本市の主要産業である農業でありますが、昨年末の「オーガニックビレッジ宣言」に基づき、持続可能な農業の振興と、有機農業をはじめとした環境にやさしい農業を推進するため、笠間市環境農業推進協議会を中心に、専門家を招いた米や野菜の栽培講習会の実施や、有機JAS認証の取得を目指す方への支援など、担い手となる生産者の拡大を図るとともに、農産物の高付加価値化に向けた取り組みを進めてまいります。
あわせて、有機農産物を学校給食へ提供するオーガニック給食についても、市内産にこだわらず、県内産も活用しながら、さらなる推進を図ってまいります。
次に、「笠間の栗」産地づくりの推進においては、生産規模の拡大を図る生産者への補助事業や、剪定講習会による技術向上を図るとともに、ブランド認証制度の推進、コールドチェーンによる流通・販売を行い、栗の品質向上に努めてまいります。
また、耕作放棄地の解消と栗の生産拡大を目的に、日草場周辺で進めている「笠間の栗」水田畑地化モデル事業についても、本格的な工事に着手し、年度内の一部植栽開始に向けて進めてまいります。
販売面においては、市内外で「笠間の栗」を使用した商品が数多く提供され、年々、知名度が大きく向上しております。引き続き、都内などでのPRに加え、北海道などにおいて、新たな販路拡大を進めてまいります。
様々な施策展開により付加価値を高め、「笠間の栗」に携わる関係者の所得向上に努めてまいります。
農業基盤を強化する土地改良事業においては、石井・来栖・稲田地区での本格着手をはじめ、市内5地区の事業推進、住吉大沢地区の事業採択に取り組み、生産性の向上と担い手への農地集積の加速化を図ってまいります。
市の面積の約45パーセントを占める森林の整備活用についても、森林環境譲与税を活用し、笠間広域森林組合などと連携して、森林経営管理制度に基づく現地調査や、笠間つつじ公園周辺における間伐、市産木材の利用促進のための補助を実施してまいります。また、森林施策の強化を図るため、地域おこし協力隊を活用して、林業の魅力発信と、次世代の林業従事者の確保に努めてまいります。
観光面では、コロナ禍から回復した観光ニーズや、インバウンドによる誘客増加を的確にとらえ、道の駅のゲートウェイ機能を強化した市内観光への誘導施策の展開や、観光誘客につながるイベント支援を行ってまいります。また、滞在型観光への転換に向けて、宿泊事業者に対する改修支援などを新たに計画し、観光客の市内滞在時間の延長や交流人口の増加による地域経済の活性化につなげてまいります。
地場産品である笠間焼においては、令和5年度から交流を深めてきた台湾との連携事業や、若手作家の創業に向けた技術向上、後継者の育成を継続して支援してまいります。また、新たに、陶芸家の工房でのオープンギャラリーの開催やマーケティング戦略の強化など、作家や組合と協力して、笠間焼のブランド力向上と、新たな価値を創造してまいります。
石材の振興については、イベントの開催支援のほか、国の歴史的公共施設などの建築物への稲田石の活用促進に向けて取り組んでまいります。
8.教育環境の充実・歴史文化・スポーツの振興
次に、教育環境の充実、歴史文化・スポーツの振興についてです。
まず、学校規模、学区の在り方についてです。
令和5年度における市立学校児童生徒数はピーク時の5割を下回り、今後も、人口減少や少子化から、児童生徒数の減少が予想され、最適な学校教育の在り方や、学校規模を検討することが求められています。
これまで検討を重ねてきた学校規模や学区等のあり方については、令和6年度中に提出される学区審議会の答申を踏まえて、保護者や住民、学校運営協議会との協議や説明会等を行い、令和7年度中に策定する「第2期笠間市立学校適正規模・適正配置実施計画」に反映してまいります。
次に、不登校対策です。
市内中学校・義務教育学校(後期課程)の全てに校内フリースクールを開設し、それまで一度も登校できなかった生徒が、フリースクールに登校できるようになるなど、一定の成果が現れてきています。一方で、不登校者の低年齢化が進んでおり、令和7年度から新たに、笠間小学校に校内フリースクールを設置し、個々のニーズに合わせた支援を強化してまいります。
また、教育支援室「ここから」においては、これまでの学習指導のほかに、社会性を育むことを目的に、新たな体験活動として、農業体験や発表会などの定期イベントを実施してまいります。
次に、歴史資源の活用についてです。
筑波海軍航空隊記念館北側で発見された戦争遺構の地下室の公開に向けて、県と連携して、周辺の整備工事を行ってまいります。戦後80年を迎え、戦争の記憶の継承をするうえで重要なものとして、後世に伝えてまいります。
次に、スポーツの振興についてです。
昨年のパリオリンピックで注目された、スケートボードやブレイキンなどのアーバンスポーツについては、更に魅力を深めるため、積極的に大会の開催、誘致を進めてまいります。
また、宍戸ヒルズにおけるスポーツイベントへの支援や、アストロプラネッツやバックボーンなどのプロスポーツとの連携、パラスポーツへの関心啓発などに取り組んでまいります。
スポーツを通じた国際交流については、小学生のスナッグゴルフなどを中心に、台湾とのゴルフ交流を継続するほか、エチオピアとの交流においては、ハーフマラソンのコース内に、英雄アベベ・ビキラの名称を冠した区間の設置や、エチオピア航空の協力による、エチオピア国内大会への優勝者の招待など、第20回目を迎える記念大会として盛り上げてまいります。
9.笠間版デジタル田園都市構想の推進
次に、笠間版デジタル田園都市構想の推進についてです。
福原地区をモデル地区として、令和4年度から令和6年度まで実施してきた「笠間版デジタル田園都市形成事業」については、3年間の実証事業の成果を踏まえて、令和7年度から同じような課題を抱える他の地域へ、デジタルサービスを展開してまいります。具体的には、移動窓口サービスである「動く市役所」の運行拡大や、地域アプリ「かさまコネクト」を活用したお知らせの提供、自動草刈り機の貸し出しなどを実施してまいります。
また、日本郵便株式会社との連携による郵便局サービス拠点化事業や、市内の住宅団地をモデル地区として、デジタル活用型の防犯コンテンツなどの実証を行う、防犯コミュニティモデル事業などを実施してまいります。
10.行政区・地域コミュニティの再生
次に、行政区・地域コミュニティの再生についてです。
市と地域とをつなぐ行政区におきましては、国の交付金を活用した防犯灯管理費の補助や、現在も10の行政区で継続中の、広報かさまスマホ版を活用した実証事業など、行政区における事務や運営費の負担軽減を図ってまいりました。
引き続き、回覧文書の電子化など、事務負担の軽減を図りながら、令和7年度から、行政区内の防犯灯管理費を市が継続して負担することに合わせて、行政事務連絡交付金を見直してまいります。
また、まちづくり市民活動助成金については、これまでのNPO法人等を対象とした立ち上げ支援を見直し、行政区や自治会などの地域コミュニティの基盤強化を図る、安全、防犯や福祉の増進、レクリエーション等に関する事業を新たな対象として、市民活動を支援してまいります。
11.行政改革の再強化
次に、行政改革の再強化についてです。
市役所における事務事業のデジタル化を徹底し、業務削減と連動して、事務の効率化に取り組んでまいります。また、マイナンバーカードによるコンビニ交付の利用促進策の実施とともに、日曜開庁を含めた窓口時間のあり方など、行政サービスの見直しを検討してまいります。
昨年導入した「広報かさまスマホ版」をはじめ、かさメールやLINEなどのSNSを活用したさらなる情報発信、デジタル技術による伝達の迅速化も図ってまいります。そのほか、アウトソーシングによる、公用車管理事務の効率化や保有台数の適正化、管理のDX化などを進めてまいります。
行政経営人材の育成においては、地域活性化起業人制度や、人材派遣型の企業版ふるさと納税を活用してまいります。連携協定を結ぶ「レジデンシャル不動産」や、ふるさと納税を運営委託する「サンクス・ラボ」から人材を受け入れ、企業が所有する専門的なノウハウを生かして、業務の推進を図ります。
また、採用後10年以内の若手職員を対象に、データを活用した実践型の研修などを取り入れ、個人に適した人材育成と、職員のモチベーション向上につなげてまいります。
12.国際交流の推進
次に、国際交流の推進についてです。
本市の事務所を設置する台湾については、引き続き、行政機関や大学との連携協定に基づき、科技大学からインターン生を受け入れるほか、市内中学生や高校生の派遣交流など、観光、産業、教育、スポーツなどの分野において、人材を中心とした相互交流を深めてまいります。
海外友好都市を締結しているドイツ・ラール市や、スポーツでつながりをもつエチオピアとも交流の取り組みを進めてまいります。
おわりに
行政を取り巻く環境は、この20年で大きく様変わりしています。
従来の知識や経験だけでは直面する課題を解決することはできません。新たな発想のもと、スピード感をもって取り組むことが必要です。
未来にわたって持続可能な笠間市を築くために、議会や市民の皆様と真摯に議論を重ね、市政運営に取り組んでまいりますので、ご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。
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