施政方針(令和6年第1回笠間市議会定例会) 令和6年2月27日
はじめに(能登半島地震について)
冒頭に、元日に発生した令和6年能登半島地震について、震災によって亡くなられた方々のご冥福を心からお祈りしますとともに、被害に遭われ、今なお厳しい生活を送っておられる被災者の方々に、心からお見舞いを申し上げます。
地震発生から間もなく2か月が過ぎようとしていますが、いまだ多くの方が避難所生活を送っておられるなど、被災地では非常に厳しい状況が続いています。
本市でも被災地への支援のため、先月7日から県内の他の自治体と連携し、職員の派遣を順次行っているほか、同じく、4日から募金受付を始め、今月8日に石川県の東京事務所を通じて、これまでにお寄せいただいた義援金を被災地に届けました。
また、今月8日には、石川県輪島市への支援物資として、ブルーシート500枚のほか、土のう袋1000枚などを、危機管理課と消防本部の職員で届けました。
現地では、今も必要な物資が十分に行き届いていない状況にあり、また、断水も続いていることから、生活の再建には時間がかかる見通しとのことであります。
被災地の一日も早い復旧、復興を願いますとともに、今後も、引き続き支援を継続してまいりたいと思います。
また、このような自然災害は、いつ、どこで発生するか予測できませんので、本市の防災対策の強化についても進めてまいります。
施政方針について(市政を取り巻く状況)
はじめに、市政を取り巻く状況についてです。
今国会冒頭の岸田首相の施政方針演説において、「経済対策」と「少子化対策」を政府が取り組む最重要課題として掲げております。
まず、「経済対策」については、国における物価高騰対策を盛り込んだ補正予算の成立を受け、本市においても、昨年12月の市議会定例会において補正予算をご承認いただき、プレミアム商品券の発行による家計支援など、物価高騰対策事業を進めているところでございます。
国においては、先に閣議決定した「デフレ完全脱却のための総合経済対策」により、引き続き、「物価高騰対策」、「賃上げの実現」、「企業の稼ぐ力の強化」などの取組みを進めていくこととしております。本市としても、国の政策に連動した「地域経済の基盤と稼ぐ力の強化」のための取組みを、迅速に進めてまいります。
一方、政府は、「人口減少問題」を日本社会の最大の戦略課題として、「少子化対策」に全力で取り組んでいくとしています。
厚生労働省の「国立社会保障・人口問題研究所」が昨年12月に公表した「地域別将来推計人口」によると、本市の2050年の総人口は今よりも3割以上減少し、5万人を下回る見込みであり、また、働き手となる生産年齢人口については今よりも4割以上減り、65歳以上の高齢者人口とほぼ同じになる。14歳以下の人口については総人口の1割を切り、今よりも半減するという厳しい結果が示されております。
さらに、民間有識者らで作る「人口戦略会議」が、先月9日に岸田内閣に提言した「人口ビジョン2100」によりますと、日本の総人口は、わずか76年後の2100年に約6300万人に半減し、急激な人口減少による市場の縮小によって、経済・社会システムが現状を維持できなくなると指摘しております。
このことから、2060年までに合計特殊出生率を2.07までに回復させ、安定的で、成長力のある8000万人国家を目指すべきとし、今取り組まなけらばならない具体策として、「若者の雇用改善」、「女性の就労促進」、「総合的な子育て支援制度の構築」、「外国人材の活用」などを掲げています。
本市にとっても、「少子化対策」は真っ先に取り組まなければならない課題であり、国の動きを注視しながら、本市独自の「子ども・子育て」施策を着実に進めてまいります。
令和6年度の重点プロジェクト
重点プロジェクトの概要(総論)
このような市政を取り巻く状況を踏まえ、令和6年度は「未来に向けた笠間市づくり」を重点課題とし、「子ども・子育て」、「地域経済の強化」、「女性活躍」と、ここに「防災対策の強化」を加えた4つの重点プロジェクトを設定し、笠間市の将来に向けた成長と持続に資する取組みを進めてまいります。
重点プロジェクトの概要(各論)
1.防災、災害回復力の強化
はじめに、「防災、災害回復力の強化」についてです。
我が国は地震の多発国であり、2011年3月の東日本大震災をはじめ、2016年4月の熊本地震、2022年3月の福島県沖地震、そして、本年1月の能登半島地震と、各地に大きな被害を与えた地震が頻発しています。
また、近年は地球温暖化の影響による豪雨や巨大台風など、これまでの想定をはるかに超える自然災害の発生も懸念されるところです。
このことから、令和2年に策定した「笠間市国土強靭化地域計画」に基づき、「防災、災害回復力の強化」の取組みを進めてまいります。
「防災対策の強化」
まず、「防災対策の強化について」ですが、現在、市内には6か所の拠点避難所と、5か所の福祉避難所が指定されていますが、このうち、拠点避難所を新たに2カ所(友部第二中学校、いわまB&G海洋センター体育館)拡充を図るとともに、避難所環境の向上のため、備蓄する簡易ベットの増設や、飲料水の確保策として、1000リットルの水を貯水できる組立式給水タンクの配備など、防災資機材、備蓄品を充実させてまいります。
また、災害時の迅速な対応のため、地震や洪水など、具体的な災害を想定した市民との総合防災訓練を実施するとともに、市役所や消防、警察、自衛隊などのOB職員を災害時の被災者支援、復旧活動等に協力してもらう「災害時支援員登録制度」や、断水の際に、個人宅の井戸を地域住民に開放するための仕組みなど、新たな防災対策についても進めてまいります。
自主防災組織については、令和5年度に新たに1組織が結成され、組織数は156団体で組織率は64.41%となっています。
令和6年度は、地域の防災訓練等への支援をはじめ、老朽化した資機材等の更新に必要な費用補助などを行い、更なる「地域防災力」の強化に取り組んでまいります。
原子力災害への備えとしては、東海第二発電所から30km圏内の区長等を対象に、スクリーニング検査を体験していただくなど避難時行動を想定した、民間事業者との連携による原子力災害対応研修を実施してまいります。
「消防体制の強化」
次に、「消防体制の強化について」ですが、「消防強靭化計画」に基づき、消防職員の計画的な人員確保を進め、消防体制の強化を図ってまいります。
また、激甚化する自然災害への対応力を強化するため、悪路走破性の高い消防車両や、倒壊した建物から要救助者を救出するための資機材を計画的に配備するとともに、訓練による災害現場での対応力を強化してまいります。
消防団については、団員の高齢化や、なり手不足、昼間の活動が困難になるなどの様々な課題に対応するため、笠間市消防団審議会を設置し、分団の統廃合などを含めた今後の消防団組織の在り方について議論を進めてまいります。
「都市基盤の強化」
次に、都市基盤の強化についてであります。
能登半島地震では、道路などの交通網の寸断による物資輸送の途絶や、水道、電気、通信設備などのライフラインの甚大な損傷により、住民の生活再建に困難をきたす状況が長期化しました。
このことから、大規模災害に対応するため、「都市基盤の強化」に取り組んでまいります。
まず、災害時の広域避難や物資搬送のための重要な交通インフラとなっている北関東自動車道へアクセスする「笠間パーキングエリアスマートインターチェンジ整備事業」については、「笠間パーキングエリア」に接続するアクセス道路の改良工事などを、県やNEXCO東日本と連携を図りながら進めてまいります。
道路整備につきましては、市役所前の市道1級13号線のほか友部地区の緊急輸送道路等の無電柱化や、橋梁の点検・補修、狭あい道路の拡幅、排水路の整備など、適正な維持管理による防災・減災対策を進めてまいります。
河川の氾濫対策として、市内を流れる主要河川である涸沼川等について、県とともに、引き続き、計画的な河川改修を進めてまいります。
2.笠間まるごと子育て都市宣言プロジェクト
次に、2つ目として、「笠間まるごと子育て都市宣言プロジェクト」です。
本市の昨年の出生者数は316人で、今年度に20歳を迎えた人数668人の半分以下という状況であり、少子化は喫緊に対応すべき課題であります。
このことから、若い世代が希望をもって結婚し、安心して子どもを産み、育てられる社会を目指し、子ども・子育て施策を最重要課題として、取組みを進めてまいります。
「こども部の創設」
まず、「こども部の新設について」です。
児童福祉法の一部改正に伴い、児童福祉と母子保健に関する包括的な支援を行うため、4月から、新たに「こども部」を創設します。
こども部には、「こども政策課」、「こども福祉課」、「こども育成支援センター」の3つの課を配置し、総合的な子育て支援策を推進するとともに、保健師や社会福祉士、心理士、精神保健福祉士などの専門職が連携しながら、妊産婦や子育て世帯などからの相談を受け、必要な支援を一体的に実施するための体制強化を図ります。
「産後ケア、出産・子育て応援」
次に、「妊娠から出産、子育てへの切れ目のない支援について」ですが、まず、妊娠を望む方に対する支援としては、不妊や、不育症の検査・治療等に要する費用補助、将来子どもを産み、育てることを望む小児・AYA世代のがん患者等への「妊孕性温存療法」と「温存後生殖補助医療」に要する費用補助などを行ってまいります。
出産後の子育て支援体制の確保を目的とした「産後ケア事業」については、これまでの宿泊型・デイサービス型に加えて、県立中央病院の協力をいただき、アウトリーチ型の相談支援を行うとともに、里帰り等で県外の産婦人科で産後ケアを利用された方への補助なども新たに実施してまいります。
また、妊娠期から出産、子育てまでの伴走型の相談支援と併せ、妊娠届出時と出生後に、それぞれ5万円を給付する経済支援も継続して実施してまいります。
「義務教育期における子育て支援」
次に、「義務教育期における子育て世帯への支援について」ですが、まず、小学校の新入学生に対しては、再生PETボトル繊維を使用し、環境にも配慮したエコランドセルを引き続きプレゼントしてまいります。
また、中学校等への進学に際して、制服等購入費用の一部として、一人につき3万円を支給します。
さらに、高校等への進学時には、新生活を応援するため、一人につき5万円を支給するなど、義務教育期のライフステージに応じた、切れ目のない支援を行ってまいります。
「学校給食費負担軽減、第三子給食費無償化」
次に、「学校給食における保護者の負担軽減策について」ですが、物価高騰の影響により食材の価格も値上がりしている中で、質や量を落とすことなく、安定的に給食を提供するため、食材費の価格高騰分を市が負担することで、給食費の値上げをせず、保護者の負担軽減を図ります。
さらに、多子世帯の経済的負担の軽減を図るため、18歳までの子を3人以上養育する世帯を対象に、小・中・義務教育学校に在籍する第3子以降の給食費を無償化します。
3.地域の稼ぐ力 強化プロジェクト
次に、3つ目として「地域の稼ぐ力強化プロジェクト」です。
本市の魅力ある農産物や観光資源を生かした市民の所得向上と、地産地消などによる地域内での経済循環といった双方の取り組みを促進してまいります。
また、企業や宿泊施設等の誘致を進めることで、地域内に新たな需要を生み出し、経済の活性化を図ってまいります。
「笠間の栗ブランド化」
はじめに、「笠間の栗ブランド化について」ですが、2020年の農林業センサスにおいて、笠間の栗の生産農家数は669経営体、栽培面積は484haと、いずれも全国1位となっていますが、一方で、生産者の高齢化や後継者不足、市場に流通する栗の品質のばらつきなどの課題もございます。
このようなことから、「儲かる笠間の栗産地づくり協議会」が中心となり、笠間の栗のさらなるブランド力向上のため、「生産」、「加工」、「販売」、「ブランド化」の4つの要素から、それぞれ取組みを進めます。
2028年までに、10aあたりの収穫量200kg、1kgあたりの単価1,500円を目標に掲げ、栗の生産規模拡大を図る生産者への支援や、作業省力化の機械導入への補助、剪定講習会による栽培技術の向上などに取り組みます。
また、むき手マイスター養成講座による加工技術の継承、新たに加工事業に取り組む生産者に対する機材等の購入補助、常温で販売できる栗商品の開発などを進めるとともに、「ブランド化」について、販売する生栗の品質向上を図るため、厳格な品質審査による「笠間の栗 ブランド認証制度」を確立させてまいります。
さらに、遊休農地となっている水田を栗畑に転換するための「笠間の栗水田畑地化モデル事業」については、令和6年度に測量設計、令和7年度に工事、令和8年3月に栗の植栽を予定し、計画的に事業を進めてまいります。
「観光戦略の推進、笠間工芸の丘の整備」
次に、「観光戦略の推進について」ですが、昨年は、「茨城デスティネーションキャンペーン」と、テレビCMの放映、そこに、栗や菊のシーズンが重なったことなどから相乗効果を生み、多くの観光客の方が同時期に笠間に来訪され、コロナ禍前以上の賑わいとなりました。
この好機を逃さず、更なる観光客の呼び込みを図るため、CMの撮影地をめぐる市内周遊ツアーの造成など、アフターDCの取組みもしっかりと進めてまいります。
「笠間工芸の丘」については、来年3月のリニューアルオープンに向け、現在、改修工事を進めているところですが、この4月には新たなレストランを先行オープンさせ、笠間の地元食材を使ったメニューなどを提供してまいります。
また、6月には、彫刻家で日本芸術院会員でもある能島征二氏のギャラリーを施設内に設置するなど、「笠間の食」と「陶芸などの体験」、そして「芸術」を一体のテーマとした、魅力を創り出す施設として、「笠間工芸の丘株式会社」の指定管理のもと運営を行ってまいります。
「企業誘致の推進」
次に、「企業誘致の推進について」ですが、まず、茨城中央工業団地笠間地区および周辺地区においては、これまで9社の製造・物流企業が操業を開始しており、今後、3社が操業開始の準備を進めているところですが、引き続き、残り約28ヘクタールの区画についても、県の主導のもと積極的な誘致活動を行ってまいります。
そして、安居工業地域の整備につきましては、令和7年度中の完成を目指し、その基盤となる道路や水路等の整備を進めてまいります。
「台湾交流事業」
次に、「台湾交流事業について」ですが、台湾との交流については、3か年の活動計画を定め、グローバル人材の育成、笠間の栗や農産物加工品の販路拡大、台北市及び旅行会社等と連携したインバウンドの推進などの取組みを進めてまいります。
また、中学生のオンラインによる学校間交流を発展させ、中学生親善大使を台湾に派遣し、英語と中国語による交流を実現するとともに、高校生については、MOUを締結した台湾の大学への短期留学などにより、国際的な視野を持つ人材を育成してまいります。
さらに、台湾の学校給食での「笠間の栗」の加工品の提供や、台湾のホテルや菓子メーカーへの栗ペーストのセールスなど、「笠間の栗」のブランド力向上を目指してまいります。
なお、台湾での事業展開の核となる「笠間台湾交流事務所」については、所在地を台北市内中心部のビジネスセンターに移転し、新たな体制のもとで運営を行ってまいります。
4.女性・若者活躍促進プロジェクト
最後に、4つ目として、「女性・若者活躍促進プロジェクト」です。
働く意欲のある女性が、それぞれの個性と能力を十分に発揮し、活躍できるまちづくりを進めます。
また、地域の担い手や企業などの人材不足により、日常生活や地域経済への影響が顕在化していることから、性別や国籍を問わず、多様な人材が活躍できるダイバーシティ社会を目指し、取組みを進めてまいります。
「女性活躍サポート」
本市には、企業経営や陶芸、農業、飲食業など、様々な分野で活躍する女性が多く存在しています。
このような頑張る女性を応援するため、伴走型のワンストップ相談窓口を設置し、女性のキャリアアップのための資格や免許の取得費用の一部助成、市内での創業支援補助に女性枠を新設するなど、女性が地域で活躍するための取組を進めてまいりました。
令和6年度は、女性からの相談を受け、様々な窓口に結びつけるための支援を行う「女性活躍サポートセンター」を開設し、地域で活躍する女性の育成や、職業の紹介、就業、起業までの一貫した支援を実施してまいります。
「介護、保育人材の確保」
次に、「介護、保育人材の確保について」ですが、高齢化が進み、介護サービスの利用者の大幅な増加が見込まれる中において、介護分野の人材不足が喫緊の課題であります。
このことから、新たな担い手として期待されている「外国人介護従事者」を雇用する事業者に対し、雇用者1人につき20万円、年間40万円を上限に費用補助を行い、介護サービスの安定的な提供体制を確保してまいります。
また、保育人材の確保策として、令和元年度からスタートさせた民間の保育施設等への保育士や看護師の就労支援金(1人につき20万円)についても継続し、引き続き人材の確保に取り組んでまいります。
「市職員の多様な人材の確保」
次に、「市職員の多様な人材の確保について」ですが、公務員においても人材不足は深刻な状況にあり、優秀な人材をいかに確保するかが大きな課題となっています。
このことから、本市で初めてとなるグローバル枠での外国籍の正規職員を採用することとしました。
このような取組みは、本市のダイバーシティを進めていくうえでも非常に重要でありますので、今後、第2、第3の事例につながるよう、人材確保に取り組んでまいります。
「台湾大学生のインターンシップ」
次に、台湾大学生のインターンシップとして、2名を夏頃から3か月程度の期間、市役所で受入れを実施します。
受入れ後の主な業務は、異なる文化から見た市の様々な情報発信を行ってもらうことや、インバウンドの推進に向けたイベント企画等に従事してもらう予定です。
今回は、市役所業務での受入れとなりますが、今後は市内企業でのインターンシップの受入れなども検討してまいりたいと思います。
令和6年度予算の概要
次に、令和6年度の予算の概要についてご説明申し上げます。
これまでご説明した重点プロジェクトのほか、第2次総合計画に基づく48事業を重要事務事業として位置づけ、令和6年度予算を編成しました。
まず、歳入についてですが、市税について、定額減税による市民税の減を見込んだことにより、市税全体では3.0%の減としておりますが、定額減税による減収は、地方特例交付金として全額国費で補てんされることとなっております。
地方交付税につきましては、国の地方財政計画における地方交付税総額が、前年度と比較して増となる見込みでありますが、公債費算入の減などを考慮し、前年度同額を見込んでおります。
一方、歳出の主なものにつきましては、社会保障関連経費の増に加え、国の施策である定額減税を補足する定額減税補足給付金のほか、只今説明した「重点プロジェクト」にかかる事業を中心に、防災対策、子ども・子育て関連、道路などのインフラや公共施設等の整備等に係る費用など計上したところでございます。
その結果、令和6年度の一般会計予算は、総額340億6,000万円で、前年度と比較しますと7億9,000万円、率にして2.4%の増となります。
特別会計予算については、国民健康保険特別会計をはじめとする4会計で、予算総額は166億6,900万円であります。
企業会計予算については、病院事業会計をはじめとする4会計で、予算総額は86億6,293万7千円であります。
なお、一般会計予算、特別会計予算及び企業会計予算を合わせた、本市の令和6年度の予算総額は、593億9,193万7千円で、令和5年度と比較すると6億2,197万2千円、率にして1.0%の減となりますが、予算規模としては、昨年度に次いで、過去2番目となります。
令和6年度事業の概要
次に、令和6年度予算に関する主な事業について、第2次総合計画に基づく7つの施策ごとにご説明します。
結びに、冒頭にも申し上げましたが、全世界を巻き込んだ感染拡大から4年目となる新型コロナウイルス感染症対策が、今春、大きな転換点を迎えることとなります。
我々には、これまでの困難な日常を乗り越えてきた気概と、知識と経験がございます。
市を取り巻く様々な課題の解決に向けて果敢に挑戦し、笠間の未来を創るため、市議会議員各位、並びに、市民の皆様と真摯に議論を交わし、市政運営に取り組んでいく決意でありますので、皆様のご理解ご協力をお願い申し上げる次第であります。
1.都市基盤
「道路整備」
はじめに、道路整備についてであります。生活道路の整備については、各行政区からの要望を基に、優先度の高い生活道路から計画的に整備をしてまいります。
市内の渋滞対策として、県立中央病院周辺の交通渋滞緩和のための「(仮称)鯉淵南友部線」の整備について、令和6年度は道路の詳細設計を進めてまいります。
また、旭町地内の慢性的な交通渋滞を緩和するため、迂回路となる周辺道路の舗装・修繕などを行ってまいります。
「上下水道」
水道事業については、防災対策の強化を踏まえ、40年を経過した老朽管約126kmのうち、漏水が発生しやすい塩化ビニール管の延長約23kmを優先し、耐震性のある新たな水道管への布設替えを順次進めてまいります。
また、将来にわたる安心・安全な水の供給体制を維持するため、茨城県が主催する「水道事業に係る広域連携検討・調整会議」に参加し、県全体での水道事業の広域化について、本市としての議論を進めてまいります。
下水道事業については、経年劣化による破損や硫化水素の発生により腐食した下水道管渠の更新工事や補修工事、また、老朽化した施設の更新事業などを計画的に進めてまいります。
合併浄化槽設置の補助金制度については、これまで農業集落排水処理区域及び公共下水道認可区域を除いた区域を補助対象としていましたが、下水道未整備地区のすべてが補助対象となるよう、補助対象区域の拡大を行ってまいります。
2.生活環境
「脱炭素社会の実現」
次に、「脱炭素社会の実現について」ですが、脱炭素社会の実現のための取組みとして、これまで市民向け講演会の実施や、家庭や事業所に対する省エネ効果の高い家電製品への買い換え補助、省エネ発電設備等の導入補助などを行ってまいりました。
また、今月14日に東京電力パワーグリッド株式会社下館支社と地域脱炭素の実現を目的とした連携協定を締結するなど、脱炭素に向けた基盤の強化を図ってきたところでございます。
現在、本市の脱炭素を実現するための実行計画となる「地球温暖化対策実行計画 区域施策編」の策定を進めているところでございますが、本計画に基づき、医療、福祉、保育関連事業者に対する再エネ発電設備や蓄電システムの導入補助、公用車のEV化の推進、公共施設への太陽光パネルの設置などの取組みを積極的に推進してまいります。
「新清掃施設の整備」
次に、「新清掃施設の整備事業について」ですが、新たな清掃施設建設に向け、これまで進めてきた、「清掃施設整備基本計画の策定」、「PFI等導入可能性調査」及び、「生活環境影響調査」を引き続き行うとともに、令和6年度は、新たに施設整備にかかる要求水準書の作成や、事業者の選定などを行う「事業者選定アドバイザリー業務」を進め、参加事業者からの提案書に基づき、具体的な事業費や工期などを決定してまいります。
新たな清掃施設に関しては、安定的に稼働できる施設であるとともに、発電した電力を施設内で利用するなど、脱炭素にも寄与できる施設としての検討を進めてまいります。
「茨城県央環境衛生組合の設立」
次に、本市と茨城町による新たな「し尿処理等の体制」についてですが、先月19日に県から一部事務組合設立の許可を得たことから、4月1日に「茨城県央環境衛生組合」を設立いたします。
今後は組合が主体となり、環境に配慮した「し尿処理施設」の建設工事を進めてまいります。
「防犯対策」
次に、「防犯対策について」ですが、令和5年の市内における刑法犯罪件数は468件で、前年と比較して122件増加しております。このうち、住宅侵入窃盗については発生件数が45件と、この5年間で最も多くなっております。
このようなことから、市民の防犯対策強化のため、行政区が設置する防犯カメラや防犯灯に要する費用への補助を継続して行うことで、地域の防犯対策を充実させてまいります。
3.健康・福祉
「子ども育成支援事業」
次に、「成長や発達が気になる子どもへの支援について」ですが、こども育成支援センターへの保護者などからの相談件数は、令和5年度は12月末までに1590件と、昨年度と比較して348件増えている状況にあります。
このようなことから、隔月で実施している医師や言語聴覚士による発達相談事業の充実などを図ってまいります。
また、児童発達支援事業所「まろん」での育成指導においては、言語聴覚士や作業療法士などの専門職による質の高い指導を引き続き実施していくとともに、昨年12月に発足した「笠間市児童発達支援連絡会」と連携し、指導者のための研修会を開催するなど、市内全体における支援体制の充実を図ってまいります。
「医療的ケア児への支援」
次に、「医療的ケア児への支援」についてですが、市内の保育施設や学校等に通う児童のうち、日常的な医療行為が必要な子どもに対して、市内の訪問看護ステーションから看護師を派遣し児童へのサポートを行っております。
現在、市立病院においても医療的ケア児に対する訪問看護の体制を構築しておりますが、子どもたちの健やかな成長と家族の負担軽減を図るため、地域全体でのサポート体制を構築してまいります。
「高齢者福祉」
次に、「高齢者福祉について」ですが、令和6年度から8年度までの「高齢者福祉計画・第9期介護保険事業計画」に基づき、高齢者が住み慣れた地域で安心して生活できるための施策に取り組んでまいります。
今計画の特徴としては、地域包括支援センターを中心とした相談支援体制の充実、在宅医療と介護の連携、地域の多様な主体による日常生活への支援体制の構築などを重点的に取り組む事業として定めるとともに、認知症施策や、成年後見制度の利用促進などを包括した計画内容になっています。
また、第9期計画における介護保険料につきましては、介護サービス利用者の増加による給付費の伸びなどから、基準額(月額)で800円増の6,500円として算定したところですが、激変緩和策として、介護給付費準備基金からの繰り入れにより400円の減額を図り6,100円とさせていただき、介護サービスの適切な提供や、介護予防の推進のため有効に活用し、効果的な事業運営を図ってまいります。
4.産業振興
「有機農業の推進」
次に、「有機農業の推進について」ですが、今月発足した、生産者及び、市、県、農業公社の職員などで構成する「笠間市環境農業推進協議会」を中心として、有機農業を目指す生産者に対し、環境への負荷を軽減した持続可能な農業の実践と、オーガニック農産品の高付加価値化などに取り組んでまいります。
また、学校給食におけるオーガニック給食の拡大を図るため、これまでの北川根小学校と、新たに宍戸小学校をモデル校に追加し、有機米や有機野菜などの提供を行ってまいります。
「土地改良事業」
次に、「土地改良事業について」ですが、すでに事業着手している「石井・来栖・稲田」地区については、換地作業と幹線道路や用水路などの設計を進めてまいります。
また、「大渕」、「南友部・大田町」、「友部中央」、「押辺・安居」の4地区についても引き続き事業推進を図るとともに、令和6年度は、事業採択に向けて現地調査を進めている「住吉大沢」地区と、先ほど申し上げた「笠間の栗 水田畑地化モデル事業」地区においても、関係機関と連携して、土地改良事業を進めてまいります。
「森林の整備」
次に「森林の整備について」ですが、令和6年度から一人年額1,000円が賦課徴収される「森林環境譲与税」の活用に向けた基本方針を定め、森林経営管理制度に基づく現地調査を福原地内と上郷地内で実施してまいります。
現地調査の結果を踏まえ、林業経営に適した森林については、笠間広域森林組合などの意欲と能力のある林業経営体と連携しながら経営管理を実施し、それ以外の森林については市が適切な整備を進めてまいります。
また、森林整備においては、現在、間伐等を行っている「笠間つつじ公園」周辺の整備を引き続き実施してまいります。
5.教育・文化
「学力向上策:英語指導助手による英会話レッスン事業」
次に、児童生徒の学力向上策についてですが、令和6年度は中学生の英語力の向上に取り組んでまいります。
本市の英語指導助手が講師となる無償の公営塾を土曜日の午後に開設し、少人数での英会話指導を通して、生徒が英語での日常会話が出来るレベルの語学力を習得し、グローバル社会で活躍できる人財の育成を目指します。
「特別な配慮が必要な児童生徒への支援」
次に、「特別な配慮が必要な児童生徒への支援について」ですが、小学校入学や中学校進学の際に、特別な配慮や支援が必要な子どもが円滑に新たな環境に適応できるよう、特別支援連携コーディネーター2名を新規雇用します。
コーディネーターは、幼児期から義務教育終了時までの特別支援教育の連携を図り、適切な学習環境の提案や、特別支援学級の担任への指導・助言を行うことなどにより、スムーズな就学や進学につなげてまいります。
また、不登校への対応ですが、登校への不安や、学級での学習に悩みを抱える生徒が、問題解決までの期間中、校内の別の教室で学校生活を送れるよう、令和5年度に友部中学校をモデル校として実施した「校内フリースクール」を、市内全ての中学校・義務教育学校に拡充してまいります。
「教育施設整備:北川根小学校整備事業」
次に、「教育施設の整備について」ですが、北川根小学校校舎が築34年を経過し、老朽化が進んでいることから、令和6年度からの2か年による長寿命化改修工事を実施します。
主に、校舎の屋根、外壁などの改修工事をはじめ、太陽光パネルの設置や教室照明のLED化など、脱炭素化を推進するための機能面での充実を図ってまいります。
「文化振興」
次に、「文化振興について」ですが、本市には地域が管理する文化資源が数多く存在します。
昨年末に、全区長に対し地区の文化資源に関する調査を行った結果、9件の情報提供があったことから、現在、文化財保護審議会委員による文化的価値の調査を進めており、一定の価値が認められる物件については、保存に向けた方法などを検討してまいります。
富田家住宅の活用については、「宿泊することができる古民家体験施設」として、建物の腐朽状況や、耐震性などを評価する古民家再生総合調査の結果をもとに、運営形態や具体的な活用方法の精査と、旅館業法など各種法令への適合に必要な改修などを進めてまいります。
日本遺産推進事業についてですが、これまでは事務局を益子町と2年交代で分担していましたが、令和6年度からは笠間市が事務局となり、益子町からの派遣職員1名を受け入れ、事業を進めてまいります。
また、新たに「食によるかさましこPRプロジェクト」として、日本遺産認定ストーリーの軸である笠間焼や益子焼などの「焼き物」と、観光の要素として不可欠な「食」を組み合わせた、ご当地メニューの開発などを進めてまいります。
「スポーツシティかさまの強化」
次に、「スポーツシティかさまの強化について」ですが、今年は、2024パリオリンピック・パラリンピックが開催され、更なるスポーツでの盛り上がりが注目されます。
この好機を逃すことなく、スケートボードやBMX、ブレイキンなどのアーバンスポーツの大会を誘致していくとともに、ダイバーシティとスポーツを融合し、子どもからシニア、そして障がいのある方など、誰もが楽しめるスポーツ競技の普及、啓発に取り組んでまいります。
また、「スポーツ国際交流推進事業」については、特に台湾とのゴルフを通じた交流を引き続き推進し、小学生のスナッグゴルフ交流のほか、台北城市科技大学のゴルフ部合宿の受入れ、市内高校生とのゴルフ交流などを、市内ゴルフ場の協力のもと進めてまいります。
6.地域づくり
「笠間版デジタル田園都市構想の推進」
次に、「笠間版デジタル田園都市構想の推進について」ですが、モデル地区である福原地区において、これまで、スマートフォンの貸出しやWi-Fi環境の整備を図りながら、地域アプリ「かさまコネクト」を活用した市からのお知らせの発信や、データヘルスケアの取組みなど、デジタル技術の活用による地域課題解決の検証に取り組んでまいりました。
3年目となる令和6年度は、地域の担い手不足への対応として、共有地などの除草作業において、アプリで貸出し予約ができる「自動草刈機シェアリングサービス」を導入し、効果検証を行うなど、同じような課題を抱える他の地域へのサービス拡大を見据え、取組みを進めてまいります。
「ふるさとづくり寄附金」
次に、「ふるさとづくり寄附金について」ですが、令和5年度の寄附金額については、本市の強みである「栗」を使用したモンブランなどの返礼品を増やしたほか、新たな取組みである「ふるさと納税型クラウドファンディング」などにより、1月末現在、収入ベースで1億6,240万4千円と、昨年度の同時期と比べ微増となっております。
令和6年度においては、さらなる魅力ある返礼品の開拓や、市外からの来訪者の多いゴルフ場や観光施設において、寄付という形での買い物や体験などができる「現地決済型ふるさと納税」の導入を積極的に進めてまいります。
7.行政運営
「デジタルトランスフォーメーション」
次に、「デジタルトランスフォーメーションの推進について」ですが、令和6年度は、特に、市からの紙媒体での通知や連絡をデジタル化する「電子通知」の運用を検討してまいります。
電子通知については、今年の秋に予定される郵便料金の値上げに関連し、コスト削減の有効な手段であるとともに、郵便物の発送業務の省力化や、ペーパーレス化による環境への負荷軽減にもつながるものと考えておりますので、早期の導入が図られるよう進めてまいります。
また、災害時などにおける職員間の迅速な情報共有を図るため、全職員に情報共有ツール「ロゴチャット」を配付し、デジタルを活用した災害対応力の強化にも取り組んでまいります。
「公共施設等の適正管理」
次に、「公共施設の適正管理について」ですが、公共施設に関しては、「笠間市公共施設等総合管理計画」及び「笠間市公共施設等適正配置計画」に基づき、施設の老朽化や借地等の課題を解消するため、令和27年度までに公共施設の延床面積20%削減を目指し、令和6年度上期までに公共施設の在り方検討を進めてまいります。
公用車の維持管理については、脱炭素社会実現のため、EV自動車への切り替えを順次進めてまいります。
さらに、安定的な電気供給とCO2削減を目的として、令和5年度に市民センターいわまの屋根にPPAモデルでの太陽光発電設備を設置し、この4月から、発電した電力を市民センターいわまで購入し、使用する予定となっています。
今後も、このような方法により、他の公共施設へのPPAモデルを推進してまいります。
おわりに
結びになりますが、急激な人口減少や地球温暖化などの社会問題は、私たちの生活に様々な影響をもたらすことになります。
しかしながら、我々の子や、孫、また、その次の世代、いわゆる笠間市の将来を引き継ぐ世代に負の遺産を残さないことが必要であり、そのためにも、「笠間市の未来をつくる」という強い信念のもと、常に目標を定め、計画を実行し、そして結果につなげていくことが重要であります。
「未来に向けた笠間市づくり」のため、様々な課題に対し、常にスピード感をもって、柔軟かつ的確に対応するとともに、市民の皆さんの声を聴き、また、議員の皆様との真摯な意見交換を重ねながら、令和6年度の市政運営にまい進してまいりますので、皆様のご理解ご協力をお願い申し上げます。
- 施政方針(令和5年第1回笠間市議会定例会)
- 施政方針(令和4年第1回笠間市議会定例会)
- 施政方針(令和3年第1回笠間市議会定例会)
- 施政方針(令和2年第1回笠間市議会定例会)
- 施政方針(平成31年第1回笠間市議会定例会)
- 施政方針(平成30年第1回笠間市議会定例会)
- 施政方針(平成29年第1回笠間市議会定例会)
- 施政方針(平成28年第1回笠間市議会定例会)
- 施政方針(平成27年第1回笠間市議会定例会)
- 施政方針(平成26年第1回笠間市議会定例会)
- 施政方針(平成25年第1回笠間市議会定例会)
- 施政方針(平成24年第1回笠間市議会定例会)
- 施政方針(平成23年第1回笠間市議会定例会)
- 施政方針(平成22年第1回笠間市議会定例会)
- 施政方針(平成21年第1回笠間市議会定例会)
- 施政方針(平成20年第1回笠間市議会定例会)
- 施政方針(平成19年第1回笠間市議会定例会)
- 施政方針(平成18年第1回笠間市議会定例会)
問い合わせ先
- 2024年2月27日
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