施政方針(令和4年第1回笠間市議会定例会) 令和4年2月28日
はじめに
新型コロナウイルス感染症は、変異を繰り返しながら、世界中で感染の拡大が続いています。国内でも数次に渡る流行を経験し、感染の拡大を抑制するために社会経済活動の制約を余儀なくされています。
このような状況の中、社会を支える医療従事者や介護従事者をはじめとするエッセンシャルワーカーの方々には、業務の遂行にあたり心から敬意を表するとともに、市民の皆さまのご協力にも感謝を申し上げます。
新型コロナウイルス感染症の克服は、今なお喫緊の課題であり、本市におきましても、引き続き新型コロナウイルスへの対応を最優先に進めていきます。
まず、ワクチン接種について、追加接種は国・県のワクチン前倒し接種の方針を受けて、2回目接種完了後6か月を目安に接種券を発送するなど、早期の3回目接種を優先して進めていきます。
また、5歳から11歳の子どもへのワクチン接種についても、接種を希望する方にできるだけ早く対応できるよう、3月6日から県や医療機関等と連携して、迅速かつ円滑に進めていきます。
検査・支援体制については、感染状況や県の動向を踏まえ、検査体制を構築して実施してきました。今後も柔軟かつ的確に対応していきます。
また、落ち込んだ市内経済の回復のための取り組みを進め、感染拡大防止と社会経済活動の両立を図っていきます。
予算編成方針
歳入について、市税は、家屋や償却資産の増加による固定資産税の伸びを見込み、市税全体では、約3.5%の増としています。
地方交付税については、国の地方財政計画における地方交付税総額が前年度と比較して増となる見込みであるほか、公債費の増などを考慮し、増額を見込んでいます。
歳出については、社会保障関連経費に加え、重点的な公共施設の整備等、感染症対応、脱炭素地域推進やデジタル化の実現に向けた経費が必要となるなど、一段と厳しい財政状況が続くものと予想されます。
このようなことから、予算編成方針の基本的な考え方として、健全な財政運営を継続するため、中長期的なコスト意識を持ち、財源不足の解消に向けて積極的に取り組む必要があるとし、全部署において経費の見直しを図り、重点的な課題への新たな取り組みを積極的に進めることとしました。
これらの結果、令和4年度の一般会計予算は、総額325億1千万円で、前年度と比較し6千万円(0.2%)の増となります。なお、新型コロナウイルス感染症関連に係る予算を除いた金額で比較すると、約1千5百万円(0.05%)の増となります。
特別会計予算については、国民健康保険特別会計をはじめとする5会計で、予算総額は167億2千2百万円です。
また、企業会計予算については、病院事業会計をはじめとする4会計で、予算総額は72億290万7千円です。
なお、一般会計予算、特別会計予算及び企業会計予算を合わせた、本市の令和4年度の予算総額は564億3千490万7千円で、令和3年度と比較すると1千804万6千円、率にして0.03%の増となります。
重要事務事業
変異を続ける新型コロナウイルス感染症に対しては、ワクチンの接種をはじめとする対策を強化し、臨機応変な対応を継続していきます。
今回のコロナ禍は、人口減少時代への対応という大きな課題にある中で、地域医療、保健、産業、教育、行政など、幅広い範囲に取り組みの加速化につながる影響と変化をもたらしました。
また、少子化、高齢化を背景とした様々な課題や脱炭素化をはじめとする地球規模の課題など、統合的な対策が求められています。
この状況を受け、令和4年度は、「ダイバーシティの推進」、「デジタル化の推進」、「脱炭素社会の実現」を視点としながら、「住みたくなる笠間暮らしの構築」を重点課題とし、「笠間市第2次総合計画」及び「第2期笠間市創生総合戦略」に即した52の取り組みを重要事務事業として設定し、人口減少時代、そしてコロナ禍における挑戦を継続していきます。
主要施策の概要
令和4年度の主要施策の概要について、笠間市第2次総合計画に掲げる「7つの政策の柱」に沿って紹介します。
1.都市基盤
- 市拠点・市街地整備
人口の急激な減少や高齢化の社会背景のもと、「笠間市立地適正化計画」に基づき、当市の市街地への移住・定住を促進する支援制度の創設や拡充により、人口減少スピードの抑制を図ります。
計画に定める誘導区域内において、魅力ある宅地開発を誘導し市内人口を下支えするため、一定の要件を満たす宅地整備を行った場合、事業者に対する補助制度を新たに創設します。
友部駅は、笠間市の玄関口としての役割を担っています。友部駅前地区の再生を目的とした「友部駅前魅力向上事業」を、地元住民で組織する友部駅前活性化協議会と共に公民連携で進めていきます。
常磐自動車道岩間ICに近接する安居工業地域については、企業立地など土地利用の促進を図るため、道路整備に向けた測量設計及び用地買収を進め、早期の企業誘致に取り組んでいきます。 - 空家・空地対策
「笠間市立地適正化計画」に定める誘導区域内における空家を既存ストックとして有効活用し、同区域内への居住集積を積極的に図るため、空家活用支援補助金の拡充や誘導区域内の良好な住環境を阻害する管理不全空家の解体を重点的に促進します。さらに、解体後の空地を住宅又は店舗等の用地として活用し、さらなる居住機能等の集積につなげるために、空家解体撤去補助金を拡充します。
今後、増え続ける管理不全空家を解消するためには、関係部署との連携が重要であり、空家に関する関連制度の見直しを検討していきます。 -
公共交通
現在の体系では、多額の公費支援を行わなければ維持することができない状況にあります。この現状を打開するため、NTT東日本ほか8機関との公民連携によりスマートシティ構想の一環として、利便性の向上につながるキャッシュレス化の導入や公共交通網再編計画の策定などを進めていきます。 - 道路等のインフラ整備
道路及び河川の整備については、防災・減災等に資する「国土強靭化基本法」に沿って令和2年3月に策定した、「笠間市国土強靭化地域計画」を基に推進していきます。
主要地方道「石岡城里線」については、安居地区から仁古田地区にかけてバイパス化を計画しています。また、その他の県道についても、交通の円滑化と歩行者の安全を確保するため、茨城県と連携して事業を推進していきます。
北関東自動車道(仮称)笠間PAスマートICについては、令和3年8月に国による事業化が採択されました。今後も関係機関と調整を進めながら、早期の供用開始に向けて取り組んでいきます。
次に、生活を支える市の幹線道路の整備については、国の交付金を活用して整備を推進していきます。「南友部平町線」については、「道の駅かさま」に通じる道路として、今月24日に全線開通しました。
「市道(友)2級5号線」は令和4年度の完成、「来栖本戸線」は令和6年度の供用開始に向けて取り組んでいきます。
また、県立中央病院を中心とした市街地道路の混雑に対し、国道50号に通じる新たな道路など、具体的な渋滞緩和対策の方針を検討していきます。
生活道路の整備については、各行政区からの要望を基に、沿線や通学路での利用状況、隣接地の用地協力等の項目からなる「道路整備の優先順位評価基準」により、優先度の高い路線から整備を進めていきます。 - 公園・緑地
笠間中央公園については、急な雨や強い日差しを避ける対策や、キッチンカーなどのイベント等による利用促進を図っていきます。 - 公営住宅の入居促進
県営福原住宅の入居率が約4割であることから、現行の笠間市公営住宅子育て世帯支援助成金を5世帯限定で、月額1万円から2万5千円に拡充し、入居を促進していきます。
また、茨城県と連携して、隣接地にオープンする高齢者福祉施設の職員を対象に入居条件を設けて、入居を促進します。 - 上水道
笠間市水道事業第2次基本計画に基づき、「水道水の安全の確保」、「確実な給水の確保」、「供給体制の持続性の確保」の3つの基本方針を掲げ、安心安全な水道水の安定供給を図ります。 - 生活排水
人口減少に伴う使用料収入の減少や、施設の老朽化に伴う更新費用の増大等による収入不足が考えられるため、供用開始以来、約30年ぶりに使用料の見直しを図り、令和4年4月から一律15パーセントの引き上げを行います。
さらに、令和4年度は、県と市が連携して策定する「広域化・共同化計画」に伴い、本市の下水道事業全体計画等の改定を進めるとともに、「茨城県生活排水ベストプラン」の改定を行います。
また、令和元年度からストックマネジメント事業により、老朽化した処理施設の更新工事を進め、浄化センターともべの汚泥処理施設等更新工事を実施します。
農業集落排水事業については、経営状況の明確化、経営の弾力化、経営意識の向上を図るため、令和5年4月からの公営企業法適用に向けての準備を進めていきます。
2.生活環境
- 交通安全対策
第11次笠間市交通安全計画に掲げる目標の交通事故死者「ゼロ」を目指し、警察署や交通安全協会、交通安全母の会との協力体制を継続した取り組みを実施していきます。
その一方で、交通安全関係団体の高齢化や担い手不足が課題となっていることを受け、昨年から、団体やボランティアが実施していた啓発活動の補完として、市内大手企業などを訪問し、交通安全の活動を組織に対し呼びかけ、企業が社員、その家族へと啓発を広げる取り組みを実施しており、本年も継続して行っていきます。
交通事故対策としては、信号機のない横断歩道に設置するLED横断意思表示灯や立体横断歩道の導入効果の検証を行い、より一層の交通安全の推進に努めます。
- 防犯体制
令和3年の市内における刑法犯罪認知件数は352件で、前年より70件減少しています。しかし、高齢者などを狙った手口の多様化や巧妙化が進んでいることから、広報紙やホームページによる注意喚起、消費生活センターの相談員による出前講座の実施や個別訪問による啓発などを強化し、被害の未然防止に努めていきます。
また、本年1月には合併後初となる凶悪な事件が発生しました。これを機に市役所内の対応体制の構築と警察との連携を強化しています。 - 防災・危機管理
総合防災訓練や学校等における防災教育、企業や団体が実施する防災イベント等への講師派遣により、一人ひとりの防災意識の醸成、防災知識の普及・啓発を図っていきます。
自主防災組織については、これまでの結成数は、152団体で組織率は63.53%です。令和4年度は、未結成の地区を対象にした説明会や講演会の実施、防災訓練等の活動支援により、地域の防災力を強化しいきます。
また、災害時に地域の集会所等を自主的に開設する「届出制自主避難所」については、現在までに40団体を超える自主防災組織に登録をいただいており、引き続き登録を促進していきます。
原子力災害については、5月に予定する災害対策本部運営訓練のほか、資機材の運用訓練、広域避難に関わる訓練により、災害応急対策や避難受け入れ自治体との連携を強化していきます。 - 消費者行政
笠間市消費生活マイスター32名による身近な見守り体制の強化や、市消費生活センターの相談員のスキルアップを図りながら、消費者への情報提供・啓発活動を継続していきます。
また、令和4年4月から成年年齢が18歳に引き下げとなることに伴い、若い世代の消費者トラブルが懸念されることから、市内高校等と連携し、学生に向けた消費者教育への取り組みを進めていきます。 - 環境政策
これまで、脱炭素社会の実現に向けて、ゼロカーボンシティ宣言やプラスチックごみゼロ宣言により、環境意識の高揚や事業者間の連携強化、施設整備などに取り組んできました。
そのような中、新たな事業として、再生可能エネルギー促進区域の設定や公共施設における電気の地産地消、家庭用発電、蓄電設備の導入促進、ごみの減量化を目的とした生ごみ処理容器購入補助の創設、バイオマスプラスチック指定ごみ袋の導入などの実施により、環境施策の充実を図り、2050年の脱炭素社会の実現に向けた取り組みの拡充・強化を目指していきます。 - 廃棄物対策
不法投棄対策については、監視カメラやドローンの活用のほか、警察官OBの廃棄物監理官2名体制で、監視活動や捜査機関とのさらなる連携を図り、不法投棄の撲滅を目指していきます。
分別収集については、令和4年1月19日にサントリーグループと「ボトルtoボトル」水平リサイクル事業に関する協定を締結しました。資源を繰り返し利用するなどの「見える化」により、リサイクル意識の向上を図ります。
プラスチックの資源循環を一層促進するために、市としては、令和5年度からの新たな分別回収を目指し、プラスチックをはじめとする資源物回収の拡充を含めた仕組みづくりを進めていきます。
また、地域のごみ集積所の設置についても、新規に設置をする場合の基準緩和や集積ボックス設置助成金の増額など、地域の環境整備を構築していきます。
最終処分場「諏訪クリーンパーク」については、第1期処分場の受入終了が見込まれることから、埋立容量48,600㎥の第2期処分場の建設を令和5年度の供用開始を目指して進めています。
市環境センターについては、運用開始から29年が経過していることから、老朽化への対応が課題となっています。
新たなごみ処理施設については、既存施設に隣接するグラウンドを整備地として計画策定を進めています。令和4年度は、基本計画の策定やPFI等導入可能性調査などを進め、令和10年度の運用開始を目指していきます。 - 消防体制
令和4年度から実行する笠間市消防強靭化計画に基づき、老朽化した岩間消防署の建て替えを進めていきます。さらに、職員を消防庁や県へ積極的に派遣するとともに、現場対応力向上のため実践的な訓練教育を充実させます。
消防団については、消防庁が示す「非常勤消防団員の報酬等の基準」を踏まえ報酬等の処遇の見直しを行っていきます。
3.健康・福祉
- 子育て支援
保育所等施設整備交付金などを活用した事業として、岩間地区の民間認定こども園の建て替えに伴う施設整備に対する補助事業を実施し、保育環境を整備します。
子ども家庭総合支援拠点では、母子・父子自立支援員による対応を強化し、ひとり親世帯に対して、個々のニーズに応じたきめ細かな支援を行っていきます。
「子どもを守る地域ネットワーク機能強化事業」では、専門家からの意見や指導を受け、関係者の専門性のスキルアップと関係機関との連携を強化していきます。
また、「養育支援訪問事業」では、養育が必要な家庭に対し、育児家事支援や養育に関する指導、助言等の支援を強化します。
新たな事業としては、ひとり親の自立支援を目的に、資格取得のための対象講座を受講した場合に費用の一部を支給する「ひとり親自立支援応援事業」により、国制度の上乗せによる独自支援を行っていきます。
また、在宅で子育てをしている保護者のリフレッシュと育児負担の軽減を目的とする「ママリフレッシュ事業」については、託児付講座の実施回数を増やします。 - 保健・医療
若年がん患者の福祉用具や補正具について、費用の一部を助成することで、心理的及び経済的な負担の軽減を図るとともに、社会参加の促進や療養生活の質の向上を図ります。
また、多胎妊娠は、妊娠中に妊娠高血圧症候群や早産等のリスクが高まります。妊娠中の健康管理、経済的支援を目的に、追加受診に係る費用助成を拡大し、多胎妊婦の負担軽減を図っていきます。 - 医療的ケア児の対応
市立病院においては、訪問看護など医療的ニーズに対応したサービスの拡充を図るため、新たに、県立こども病院から医療的ケア児に対応できる看護師を受け入れ、専門的な知識や技術を持つ看護師を養成し、医療的ケア児の対応を行っていきます。 - 地域福祉
第4次地域福祉計画を策定し、高齢者・障害者・児童等の福祉の推進はもとより、ひきこもり支援や生活困窮者の問題など、社会情勢の変化を捉えた施策の推進に向けて取り組んでいきます。
また、多様化するそれらの課題への対応について、県立こころの医療センターやNPO法人などとの連携を通じて、地域の人材資源の活用と併せ、アウトリーチなどさまざまな手法を用いて、重層的な支援ができる体制を強化していきます。 - 障害者福祉
障害者福祉については、さまざまな障がいによる意思の疎通やコミュニケーションに関する課題解決への対策、地域の基盤整備などを目的とした「新たな条例」を制定します。そのひとつとして、市役所本庁・支所における遠隔手話通訳サービスの提供を開始し、市民・事業者・行政の連携協力のもと、共生社会の実現に向けた取り組みを地域全体で進めていきます。
こども育成支援センターでは、成長や発達が気になるお子さんに対し、きめ細かい切れ目ない支援を行っていきます。
相談支援事業については、近年、ことばの遅れや発音に関する相談が多く寄せられています。速やかな相談が行えるよう、市が言語聴覚士を確保し、ことばの発達相談を実施するなど、体制の充実を図っていきます。
また、就学児を対象に、怒りや感情をコントロールできるようにするアンガーマネジメントの指導体制を拡充し、有資格者の育成を行い、子どもへの指導だけでなく指導者の育成にも努めます。
育成支援事業においては、幼児期に作業療法士による感覚統合の指導が重要であることから、地域の事業者との連携により指導体制を拡充し、質の高い支援を行っていきます。
発達障がい児を地域で育てるための支援として、ペアレントトレーニングの講座や市民向けの講演会等を実施し、発達障がい児への理解と地域で子どもたちを支える支援力の向上を図ります。
- 高齢者福祉
高齢者施策では、新たに痰吸引器を必要とする在宅高齢者の経済的負担を軽減するため、機器の購入費用の一部を助成する高齢者痰吸引器購入費助成を実施します。
敬老事業では、新たに75歳、80歳(傘寿)、90歳(卒寿)の方を節目年齢の記念品贈呈の対象に加えるほか、地区が実施する敬老祝賀会に対する地域活動支援として、支援金を増額して交付します。 - 成年後見制度の利用促進
地域包括支援センターでは、令和3年度に権利擁護支援の地域連携ネットワークを目的とした中核機関を設置したことを踏まえ、広報紙に成年後見制度に関する情報の掲載や、医療・保健・福祉・司法等各分野の専門職や民生委員等との連携を強化することにより、成年後見制度の利用促進を図ります。 - 認知症施策
地域の福祉施設と協働による休日の相談体制を整備し、認知症の本人・家族を地域で支援する体制づくりを推進します。 - 国民健康保険制度
令和4年度から国民健康保険税の平等割額を廃止し、廃止分を所得割額、均等割額に上乗せはせずに、3方式から2方式による賦課へと変更します。
また、国の制度として、未就学児を対象に子どもに係る均等割額の5割軽減、さらには、市の単独制度として、国制度の未就学児を除く18歳未満の子どもにかかわる均等割額の5割減免を同時に導入し、子育て世帯の経済的負担の軽減を図ります。 - 後期高齢者医療制度
令和4年10月1日から、一定以上の所得のある方は、現役並所得者を除き、医療費の窓口負担が1割から2割になります。令和3年中の所得をもとに、令和4年度は被保険者証を7月と9月に2回送付します。 - 生活習慣病予防
生活習慣病を予防する特定健診の受診率向上を図るため、AIを活用して対象者に受診を呼びかけるとともに、糖尿病の重症化予防のため、治療中断者や未治療者に対する受診勧奨、通院中の方への保健指導プログラムへの参加促進を行っていきます。
4.産業
- 企業誘致
これまでに茨城中央工業団地(笠間地区)内に10社の企業進出が決定し、昨年は、一部企業の操業が開始されています。さらに複数社の企業が操業開始に向けて準備を進めています。これらの進出企業により、市が税収等で収入する額としては、年間1億円以上、雇用創出としては、800人以上の立地効果が見込まれるところです。
また、当該用地に隣接する仁古田地区におきましては、工業団地の進出企業関連で、物流センターの建設が進められています。引き続き、茨城中央工業団地(笠間地区)の約35haや畜産試験場跡地の約23haをはじめとした事業用地の積極的なPR活動を行い、県と一体となって企業誘致を推進していきます。 - 農業振興
次世代を担う新規就農者が、令和2年度までの過去5年間において新たに76人就農しています。
引き続き、認定農業者等が経営基盤強化のために必要とする農業機械等の整備、地域の担い手農家への農地の集積など、持続可能な農業経営に対して支援を行うことで、農家収入の拡大を目指します。
笠間クラインガルテンについては、令和4年度から新たな指定管理者のもと、公民連携による運営の効率化や老朽化する施設整備などを協議し、さらなる地域活性化やサービス向上に取り組んでいきます。
土地改良については、事業採択を予定している「石井・来栖・稲田」地区において、地権者から土地改良法に基づく事業計画への同意取得を進めています。
既に9割以上の方から同意を得ていますが、相続放棄地の問題や維持管理費用に不安がある地権者もいることから、引き続き地元推進協議会役員とともに同意取得に努めていきます。
事業を着手している「笠間大渕」、「南友部・大田町」、「友部小原」、「友部中央」、「随分附」、「押辺・安居」地区においては、引き続き関係機関と連携して推進していきます。
林業については、森林環境譲与税を活用し、豊富な資源として利用可能な人工林が多いなどの条件が整った福原地区をモデル地区として選定し、森林所有者に間伐や再造林などの森林整備に向けた意向調査を実施します。 - 地場産品
本市の栗は、経営体数、栽培面積ともに全国一です。また、これまでの取り組みの成果により「笠間の栗」の知名度は全国的に大きく向上し、市内外の和洋菓子店や飲食店で「笠間の栗」を使用した商品が数多く提供されています。
一方で、「笠間の栗」の確保や栗ペースト・甘露煮・渋皮煮の安定した品質の確保と供給が、新たな課題となっています。これらに対応するため、第2次ブランド推進戦略「儲かる『笠間の栗』産地づくり」に基づき、栗の集荷体制の強化や、新たな栗むきの技術者を育成する「笠間の栗むき子マイスター養成事業」の新設、生産拡大を重点に置いた補助事業の継続など、品質の高い生産と集荷、加工品を流通させるよう関係機関と連携を図っていきます。
また、台湾への日本産食品の輸出規制が緩和されることから、笠間の栗の海外販路拡大の取り組みの第一段階として、学校給食用として輸出を進めます。
生産者・加工事業者・和洋菓子販売事業者・飲食事業者などで構成する「笠間の栗グレードアップ会議」を発展させ、新たな組織を立ち上げ、笠間の栗に関わるすべての方の所得向上を目指していきます。持続可能な「笠間の栗」産業を実現していきたいと考えています。
また、産業経済部農政課内に「栗ブランド戦略室」を新設し、ブランディング戦略の推進体制を強化していきます。
本市の小菊は、全国でもトップクラスの生産技術・品質を誇り、平成5年より茨城県銘柄産地の指定を受けています。しかし、生産者の高齢化・後継者不足により生産者は減少傾向にあり、栽培面積・生産量とも年々減少し、小菊栽培の技術の継承、生産量の維持・回復が課題となっています。
これらの課題に対応するため、「小菊生産支援事業補助金」を新設し、作業の省力化や作業時間の効率化など新たなスマート農業に取り組むための機械を導入する生産者への支援を行います。
また、関係機関と連携し、現地研修会の開催や研修受入れ態勢の整備、栽培技術指導などの生産者の経営継続のほか、銘柄産地を維持するため、スマート農業による規模拡大後の経営体の法人化、農地の団地化や農業機械の共同利用など、産地としての生産体制の強化を進めたいと考えています。 - 笠間焼
江戸時代中期の安永年間から続く関東最古の産地として繁栄した笠間焼が、2022年に誕生250年を迎えました。
笠間焼の振興については、この節目を契機に「伝統と革新の笠間焼プライド」をテーマに、「笠間焼誕生250年祭」を実施し、作家と直結するバーチャルツアー、バーチャル商店街、サブスク機能を持ったECサイトやJクレジットの活用などを展開していきます。
また、複数年で実施しているイギリスをターゲットとした笠間焼の海外販路開拓事業である「JAPANブランド推進事業」については、コロナ禍でもリモートでの交流を続け、イギリスで活躍するアーティストとのコラボ作品の制作、PRなどで笠間焼の知名度向上に努めてきました。その結果として、イギリス国内で開催されたイベントにおいて、展示作品の7割以上が売れるという実績につながりました。今後も、産地としての販路拡大を支援していきます。 - 観光
秋を代表する催事で、第115回目を迎える日本最古の「笠間の菊まつり」ですが、現状として、菊栽培の高度な技術を持つ方が少なくなっており、栽培所職員の高齢化や担い手不足が大きな課題となっています。
このため、市の菊栽培所の体制強化として、産業経済部観光課内に「菊栽培所」を設置し、新たに所長を配置して、組織の明確化を図ります。また、老朽化した事務所の改修工事などにより、菊づくり担い手を育成する環境を整備し、栽培面積の拡大や栽培技術の向上を図っていきます。 - 道の駅かさま
本市の新たな拠点である「道の駅かさま」につきましては、指定管理者である株式会社道の駅笠間が、笠間の魅力を発信するため、市内事業者の商品紹介や売場の提供及び市内を周遊するための施設や店舗の紹介などの取り組みを実施していきます。
また、テナントでの地場農産物を活用した食の提供や、直売所及び朝市などのイベントでの加工品等の紹介販売を実施していきます。さらに、農業所得の向上に向けて、道の駅への出荷支援を行い、2022年度期の「道の駅かさま」の目標として、来場者を100万人、売り上げを10億円としています。
5.教育・文化
- ICT教育
「ICT教育指導支援員」を積極的に活用し、校内研修の充実を図りながら、学力向上に努めます。
タブレット端末の活用については、学校間連携によるオンライン授業の配信やグループワークを通じての「協働的な学び」、さらに、AIドリル等を活用したリモート学習による「個別最適な学び」を充実させ、これまでの「対面授業」と組み合わせながら、デジタル化時代に即した、効果的な教育を実現します。
また、病気療養や不登校児童生徒など、通学が困難な子ども達に対しては、積極的にオンライン授業を進め、個に応じた学びの保障をしていきます。
さらに、教育委員会内に、県内初となるキャリアコーディネーターを配置します。コーディネーターには、知識と経験が豊富な元高校教諭を採用し、小学校・中学校・高校・大学・特別支援学校などを繋ぐ役割を持たせて、学校間の連携強化を図っていきます。 - 学校給食
昨年の11月に県内一斉に実施された地場産物の活用状況調査において、295品目中80食材が活用され、前年度より5.4%増加しています。
引き続き、生産者等の協力を得ながら笠間産野菜の種類や量を増やすなど、栄養バランスの取れたおいしい給食の提供に努めていきます。
また、児童生徒が地域の食材について理解を深めることを目的に、笠間の栗を使用したモンブランケーキや常陸牛、笠間産豚肉などを提供していくとともに、日本と台湾の相互理解と友好を目的とした、台湾産バナナなどの特別メニューを提供します。 - 歴史芸術文化
牧野貞喜(さだはる)没後200年の節目に記念事業を実施します。牧野貞喜は、江戸時代後期に笠間藩主として、人口増加策・農民保護策・藩校設立など、最も藩政に尽力した人物です。
記念事業では、貞喜の生涯と功績を振り返るパネルのほか、貞喜が自ら筆を揮(ふる)い神社に奉納した社名額や貞喜親筆の和歌短冊等の関連資料を展示する企画展を開催し、貞喜の功績を後世に伝えていきます。 - 日本遺産
引き続き国の補助事業を活用し、人材育成、普及啓発、情報コンテンツ作成の各分野において地域活性化を目指して事業を展開していきます。
重点課題として、笠間・益子共同でのシンポジウムの開催をはじめ、日本遺産関連商品開発の促進に努め、販売を通じて日本遺産の魅力の発信に努めます。
また、協議会の運営については、国の補助事業の最終年度となるため、令和5年度からは独自財源を確保し、事業展開することが必要になります。令和4年度から2年間、笠間市が協議会の事務局になることから、事務局体制を含めた今後の事業展開を益子町及び関係団体と協議し、方向性を出していきます。 - スポーツ振興
星野陸也選手、畑岡奈紗選手をはじめ、本市出身のプロゴルファーの多くは、小学生時代のスナッグゴルフの経験がゴルフを始める礎となっていることから、市長杯スナッグゴルフ大会に、スナッグゴルフが盛んな市の小学生チームやプロゴルファーを参集し、ゴルフへの興味をさらに向上させる取り組みを進めていきます。
かさま陶芸の里ハーフマラソン大会については、一昨年開催した大会は、日本最大のマラソンエントリーサイトで、参加者から日本一の評価をいただいています。今後、大会のさらなる発展を図るため、茨城陸上競技協会などの協力を得ながらコース変更を計画していきます。
昭和39年の東京オリンピックの開催を記念して始まった「県下中学校交歓笠間市駅伝大会」は、第60回目の開催を迎えます。一つの自治体が主催する県内の全中学校を対象とした駅伝大会は全国的にも例がなく、中学生にとっても貴重な大会となっています。
令和4年度は、新たに自動計測システムを導入し、正確性の確保やスムーズな大会運営を図り、魅力ある大会を目指していきます。
パラスポーツの普及・啓発については、茨城アストロプラネッツの車いすソフトボールチームの活動を支援するとともに、日本初の車いすソフトボールリーグに加盟するチームによる大会や、中学生を対象とした体験会、障がい者の交流機会のほか、パラスポーツの認知度の向上を図ります。
スポーツを活用した地域経済の活性化の推進役として、昨年3月に設立した「笠間スポーツコミッション」が、誘致に成功した日本スケートボード選手権大会は、オリンピック金メダリストも出場するなど、多くのメディアにも取り上げられ、本市のイメージアップと認知度向上につながりました。
令和4年度は、スポーツコミッションの「法人化」による組織強化を図るとともに、事務所を市役所の外に独立させ、スポーツを通じた持続的なまちづくりに積極的に取り組んでいきます。 - 市立公民館
かさま志民大学・かさま子ども大学に採り入れたSDGsの目標設定や、オンライン講座配信などの取り組みが評価され、令和3年度文部科学省「優良公民館表彰」で全国1位に選ばれました。令和4年度は、公民館全館のWi-Fi化による環境整備のほか、志民大学で新たにデジタルコースを開講します。 - 市立図書館
笠間図書館での国立国会図書館デジタル化資料送信サービスの活用など、デジタル化を強化していきます。
6.地域づくり
- 移住・交流・ライフイベント
人口減少、少子化・高齢化社会の中で、まつり等の行事や清掃といった地域活動の持続が大きな課題となっています。
生涯活躍のまちづくりモデル事業として、民間企業等の参画のもとで、笠間リビング・ラボを組成し、地域資源を活用した豊かで安心が続く暮らしを実現するデータヘルスによる予防活動、電子広報の推進などを実装し、研究を進めていきます。
また、さまざまな地域の課題をデジタルの活用により解決を図る「デジタル田園都市国家構想」が進められている中で、本市においては、より生活に密着した課題をデジタルの力で解決する取り組みに着手します。
具体的には、エリアを指定し、スマートフォンの貸出やWi-Fiなどの環境整備から、買い物、交通、健康づくりなどの分野において、無人店舗やシェア型の交通サービス、健康づくりを促進するアプリケーションの導入などの実装と研究を行う「笠間版デジタル田園都市モデル事業」を立ち上げ、実証実験として取り組んでいきます。
コロナ禍で、テレワークによる移住や移住体験、サテライトオフィスやワ-ケーション施設の利用等の関係人口による移住など、時代の変化に対応した移住戦略を推進します。 - 多様な人材の活躍
令和3年10月に県内自治体として初の「いばらきダイバーシティ宣言」登録を行いました。令和4年度は、ダイバーシティ講演会の開催などによる意識・風土の醸成を図るとともに、ダイバーシティの考え方を包含した第4次笠間市男女共同参画計画の策定を進め、多様性を尊重することで、誰もが活躍できるまち、ダイバーシティ社会の実現を目指します。 - 地域コミュニティ
区長業務は地域と行政をつなぐ役割を担っており、行政文書の回覧や地域要望の市への伝達などが本来の業務です。
しかし、自治会活動である地域コミュニティ活動も同一組織で運営されていることも多く、これらの活動と混同している行政区もあり、区長への負担が過大となっているのが現状です。近年は、核家族化や高齢化の進展、ライフスタイルの変化などにより、行政区への加入率が10年間で10%も減少し、令和3年4月1日現在で、70.62%となっています。
行政区への加入率が減少している中で、本年7月の施行を目指して、「笠間市行政区への加入及び参加を促進する条例」制定を進めています。
この条例は、市民の行政区への加入及び行政区活動への参加を促進するとともに、市民、行政区、事業者、市の役割を定めることで誰もが支えあい、安心して暮らすことができる地域社会の実現を目的とするものです。
また、区長や市内事業者等から構成する、行政区への加入促進に向けた検討委員会を設立し、課題の共有・整理を進めていきます。
さらに、課題の一つとなっている各種募金活動等について、庁内の関係部署で協議を始めており、これらの徴収方法についても、これまでの慣習にとらわれず、見直しを図っていきます。
今後、条例制定を契機として、行政区の役割を明確化し、区長会との連携強化を図り、加入促進に向けた取り組みを推進していきます。
7.自治体運営
- デジタルトランスフォーメーション推進
行政手続きのオンライン化や公共施設予約システムの整備を進めてきました。
令和4年度は、新たに道路台帳や上下水道台帳、用途地域図などが自宅や事務所などから閲覧できる公開型GISを再構築していきます。
これらの取り組みにより、個々の手続きがデジタルで完結するデジタルファースト原則に基づき、来庁を必要としない行政サービスの提供を拡大していきます。
また、デジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みを市内企業などにも波及させるため、市内在住、在勤者に向けて、DX人材育成オンライン学習サービスの提供を行い、地域におけるデジタル人材を育成します。 - マイナンバーカード
現在の普及率は約40%であり、普及速度の大幅な加速が必要です。さらなる交付の円滑化に向けて、企業や団体への出張申請受付や申請時来庁方式を普及させ、交付率の向上を図っていきます。 - 行政運営
人材育成の推進について、市職員の自発的な能力開発を支援するため、各種研修への参加、他の機関への派遣機会の確保に努め、大学等の修学や国際貢献活動を可能とする自己啓発等休業や就学部分休業などを活用するなど、資格や専門知識を習得する自己啓発の機会を創出します。
また、多様な任用制度を活用し、長年の経験や知識を有する再任用職員や特定の能力に秀でた任期付職員、語学指導等の分野以外においても職務能力のある外国籍人材などの優れた人材の確保・活用に努めます。 - 笠間市ふるさとづくり寄附金
令和4年3月末の収納ベースで、昨年の同時期と比較して約5千万円増の、約1億4千万円のご寄附を見込んでいます。
令和4年度は、受付サイトの適切な運用に加え、返礼品に関しては栗や梨など人気農産物が長期に渡り提供できるような数量の確保、「道の駅かさま」や「ムラサキパークかさま」など市内施設とのコラボ商品の開発、また、市内事業所と連携した複数の返礼品を抱き合わせたジョイント商品開発を進めるなど、魅力ある返礼品の提供に努めていきます。
おわりに
新型コロナウイルス感染症の流行に加え、多様化する社会的課題など、これまでに遭遇したことのない複雑な局面に立っています。
こうした厳しい環境の中で、多くの市民や事業所が、新たな取り組みやさまざまな挑戦を続けています。令和4年度は、笠間市総合計画 後期基本計画の5年間の初年度です。笠間市の未来を創る元年と位置づけをして、施策をしっかりと実行していきます。
市政発展のため、なお一層のご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。
- 施政方針(令和3年第1回笠間市議会定例会)
- 施政方針(令和2年第1回笠間市議会定例会)
- 施政方針(平成31年第1回笠間市議会定例会)
- 施政方針(平成30年第1回笠間市議会定例会)
- 施政方針(平成29年第1回笠間市議会定例会)
- 施政方針(平成28年第1回笠間市議会定例会)
- 施政方針(平成27年第1回笠間市議会定例会)
- 施政方針(平成26年第1回笠間市議会定例会)
- 施政方針(平成25年第1回笠間市議会定例会)
- 施政方針(平成24年第1回笠間市議会定例会)
- 施政方針(平成23年第1回笠間市議会定例会)
- 施政方針(平成22年第1回笠間市議会定例会)
- 施政方針(平成21年第1回笠間市議会定例会)
- 施政方針(平成20年第1回笠間市議会定例会)
- 施政方針(平成19年第1回笠間市議会定例会)
- 施政方針(平成18年第1回笠間市議会定例会)
問い合わせ先
- 2022年3月2日
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