施政方針(平成29年第1回笠間市議会定例会) 平成29年2月28日
はじめに
我が国の人口は2008年をピークに減少局面に入っており、2015年の国勢調査によると総人口は前回2010年の調査と比べ96万3千人減少し、調査開始後初めての人口減少による推移となっています。また、年齢別人口を見ると15歳未満の人口割合は12.6%と世界最低水準まで低下しており、一方で65歳以上の人口割合は26.6%であるという、人口減少・少子高齢化という社会構造になっています。
特に地方における人口減少・少子高齢化の進展は深刻な状況にあり、消費の減少や労働力不足による地域経済の縮小、社会保障費の増大、さらには地域の担い手の減少など様々な影響を地域社会に与えています。
笠間市においても、合併時に81,256人であった人口は、本年1月1日現在では76,041人となっており5,200人ほど減少している状況にあります。人口の動態ですが、合併後に生れた子どもの数約6,300人に対し、亡くなられた方の数が約9,400人と上回っている自然減の状態であり、転出者数が転入者数を上回る社会減の状態でもあります。しかしながら、ピーク時には350人程度あった転出入の差については、この3年間の平均では150人程度と縮小傾向にあります。また、年齢別人口を見ると15歳未満の人口割合は12.1%、65歳以上の人口割合は28.4%と、当市においても人口減少・少子高齢化の進展は深刻な状況にあります。
このことから、平成27年10月に「笠間市創生総合戦略」を策定し、人口減少の抑制と自律的な都市の確立に向けた取組を進めてまいりました。
人口減少時代であっても、知恵を出し、笠間の資源を活かし、あらゆる課題に果敢に挑戦し、活力ある笠間づくりを目指して市政運営にまい進してまいります。
施政方針の考え方
4月から人口減少時代への「新たな挑戦」として、本市の目指す将来像を「文化交流都市 笠間 ~未来への挑戦~」と定めた「笠間市第2次総合計画」による新たなまちづくりのための取組をスタートさせます。
第2次総合計画においては「安全・安心で快適な質の高い生活ができるまちづくり」、「多様な産業が育ち、成長する活力あるまちづくり」、「人が集い、賑わう、多様な魅力あるまちづくり」の3つを新たなまちづくりの基本方針として掲げております。この基本方針に基づく中長期的視野を持った行政運営が必要であります。
そこで平成29年度は「笠間ブランドの確立に向けた人・街・モノづくり」を重点課題に位置付け、産業の活性化、少子化対策、教育の充実などを中心としながら、強みを伸ばし、地域の資源を活かした取組をつなぐことをテーマとして各種事業に取り組んでまいります。
まず、「人づくり」については、結婚・子育て・働く・学ぶことへの希望の実現として、英語教育強化をはじめとする学力向上推進プロジェクト、子育て支援事業としての赤ちゃんほっとルーム事業や病後児保育事業、地域コミュニティの活性化に向けた地域の課題解決支援事業などの取組を進めます。
「モノづくり」については、地域の特性を生かした産業の成長促進として、企業誘致推進はもとより、後継者育成支援や就職面接会といった若者就職応援プロジェクト、ものづくり作家等への創業支援事業、また、日本一の栗の産地づくり推進事業などの取組を進めます。
「街づくり」については、市民及び経済活動を活性化する基盤整備と活用の促進として、筑波海軍航空隊記念館の整備、地域交流センターの整備と公民連携による運営、笠間城跡保存整備調査、さらには笠間版CCRCの推進といった「人・モノづくり」と連動した拠点整備などの取組を進めます。
また、職員の働き方改革を実践していくとともに、不断の行財政改革に引き続き取り組んでまいります。
予算編成方針
経済状況の好転による市民税の増や新築家屋の増加による固定資産税の増により、市税全体では増収となる見込みであります。
地方交付税については、平成28年度から合併による特例加算が段階的に減少となっておりますが、地方財政計画における地方交付税総額は若干の減にとどまっていることから、これまでの実績を踏まえ前年同額で見込んでおります。
歳出につきましては、障害者自立支援給付事業など社会保障関係経費や公債費の増加が見込まれております。また、公共施設の更新経費に今後多額の支出が見込まれるところであります。
このようなことから、予算編成の基本的な考え方として、「優先度が高い事業に重点を置いた予算配分」、「新たな財源の確保」、「政策効果の高い事業への転換」による効率的で実効性の高い行政運営を目指すとともに、重要な課題に対しては積極的な取組を進めていくことを方針といたしました。
この結果、平成29年度の一般会計予算は総額309億5千万円で、前年度と比較しますと5億円(1.6%)の増となります。特別会計予算については、国民健康保険特別会計ほか6会計で、予算総額は205億3,352万円であります。また、企業会計予算については、市立病院事業会計ほか2会計で、予算総額は45億9,114万6千円であります。
なお、一般、特別及び企業会計を合わせた予算総額は560億7,466万6千円で、今年度と比較すると11億262万7千円(2.0%)の増となり、これは一般会計においても、特別会計及び企業会計を合わせた総額においても過去最大規模の予算額となっています。
主要施策の概要
1.都市基盤の整備
本市の恵まれた交通環境と地理的優位性を生かし、様々な交流を促進するとともに、賑わいを創出するための拠点形成、また、快適な市民生活や活発な産業活動を支えるためのインフラ整備、市民の憩いの場である公園の整備、災害に強いまちづくりなど、誰もが暮らしやすく活気に満ちたまちづくりに取り組んでまいります。
- 畜産試験場跡地の利活用
約15ヘクタールの北街区の利活用に向け県と連携しながら積極的な企業等の誘致活動、併せて、国から取得した3ヘクタール部分について、市民の憩いの場となる多目的広場としての供用を目指し、基本計画の策定から設計等の作業を進めてまいります。
- 笠間稲荷周辺地域の賑わいの創出
旧井筒屋本館については、曳き家を含めた耐震補強・改修工事を実施し、観光交流拠点としてリニューアルオープンさせます。本館2階には歴史展示コーナーを整備し、笠間の先人や笠間城などに関する展示などを行うとともに、1階には観光情報コーナーを設置し、様々な笠間の魅力を発信してまいります。また、本館前の広場を地域のイベント等が行えるスペースとして整備し、本館裏側の広場については民間による商業施設・宿泊施設の誘致を引き続き進めますが、具体化するまでの間の暫定的な整備を実施してまいります。
次に、笠間稲荷門前通りについては、地域の方々が主体となって策定した「笠間稲荷門前通り街並みづくりガイドライン」に基づく地区計画決定を行うとともに、まちの活性化についての話し合いの場である「笠間のまちと通りのこれからをみんなで考える会(かさまち考)」を中心に魅力ある街並みや景観づくりなどに取り組んでまいります。
- 空き家対策
空き家の適正管理については、これまでの情報提供に基づき231件の実態調査を行い、解体を含め121件が解決しております。また、利活用の状況ですが、空家バンク制度を利用しての成約件数は35件で、75名の方々が本市に移住・定住されております。平成29年度は「笠間市空家等対策計画」に基づき、空き家の適正管理について推進していくとともに、空き家コーディネーターを配置し、空き家に関する相談等へのきめ細やかな対応により利活用を促進させてまいります。
- 災害に強いまちづくり
大規模な地震災害への備えとして、平成21年度に策定した耐震改修計画を改正し、建築基準法の旧耐震基準で造られた市内家屋の計画的な耐震化を進めてまいります。
- 快適な道路環境の整備
懸案事項でありました宍戸駅に隣接する石岡街道踏切が拡幅され歩道が整備されました。また、岩間地区では岩間第二小学校に隣接する「主要地方道茨城岩間線」と「市道(岩)1級10号線」の交差点改良を実施し、歩行者と通行車両等の安全を確保してまいります。
- 平成29年度の道路整備計画
広域的な幹線道路の整備としては、「国道355号」笠間バイパスについて茨城県と連携しながら早期開通に向け整備促進してまいります。また、県道「平友部停車場線」については、JR常磐線の跨線橋からこころの医療センター前までを県事業として用地取得と拡幅工事が進められており、交差点となる市道(友)1級14号線についても用地の協力をお願いし、交通の円滑化と歩行者の安全を確保するため早期完成に向けて事業進捗を図ってまいります。
- 生活道路の整備
生活を支える幹線道路の整備については、平成29年度に全線供用開始を予定している笠間地区の「笠間小原線」をはじめ、「来栖本戸線」、友部地区の「南友部平町線」、「市道(友)2級5号線(随分付)」などを国の交付金を活用しながら整備推進してまいります。また、生活道路についても、積極的な整備を図りたいと考えておりますので、各行政区からの要望を基に優先度の高い路線から整備をしてまいります。
道路の維持管理については、安全で快適な通行を確保するため、市民の皆様のご協力をいただきながら道路の美化・清掃活動に取り組むとともに、修繕が必要な箇所には早急な補修を実施しながら適正な維持管理を行ってまいります。また、橋梁等の維持管理については、安全点検を定期的に行いながら適正な維持管理を図るとともに、長寿命化のための取組を進めてまいります。
- 公園
市民の憩いの場、交流の場としての適正な維持管理に努め、イベント等の利用促進、市民との協働による公園美化活動「グリーンパートナー制度」などを推進してまいります。また、公園施設長寿命化計画に基づく総合公園と笠間駅北街区公園への複合遊具の整備、鯉淵公園への遊具の設置、畜産試験場跡地の調整池周辺にウォーキングコースを併設した公園整備を図り、複合遊具などを設置してまいります。
- 上水道
安全安心な水道水の安定供給を図るため、石綿管の更新と鉛製給水管の解消に取り組んでおります。今年度末で石綿管の更新は約77%、鉛製給水管の解消については約75%が完了する見込みであり、平成29年度以降も早期完了を目指し引続き事業を実施してまいります。また、平成26年度から実施している水道料金徴収等業務の民間委託については、新たな業務項目を追加し、更なる経費削減と水道事業経営の効率化に取り組んでまいります。
- 公共下水道
処理施設の長寿命化修繕計画に基づき、供用開始後23年を経過した「下市毛ポンプ場」の機械・電気設備修繕工事を行い、処理能力の向上を図ってまいります。また、「下市毛ポンプ場」より「浄化センターともべ」へ汚水を送る笠間友部第2幹線圧送管の供用を開始させ、災害に強い下水道の構築に努めてまいります。
- 農業集落排水
供用開始区域の接続促進を図るとともに、友部北部Ⅱ期地区の管路整備を実施し、早期完成を目指してまいります。
- 合併浄化槽設置事業
公共下水道や農業集落排水の実施地区以外の申請者全員に対し、引き続き交付要綱に基づき補助を実施してまいります。
- 公共交通の強化
デマンドタクシーかさまについては運行から9年が経過し、1月末現在の登録者は8,119人となっております。また、今年度からの土曜日運行により、延べ利用者は47,475人となり、昨年度と比べると3,683人増加しております。利用者の8割が高齢者であり、通院や買い物などの交通手段としての高いニーズに応えるため、さらなる利便性の向上に努めてまいります。
2.生活環境の整備
本市の美しく豊かな自然を後世に継承するとともに、市民が安全、安心、そして快適に暮らし続けられる生活環境を構築するための取組を進めてまいります。
- 防災体制の充実
地震や台風といった大規模自然災害などに対する備えとして拠点避難所や福祉避難所への避難体制の整備、自主防災組織の育成などを進め、更なる地域防災力の強化に取り組みます。特に災害時における共助の要となる自主防災組織については、1月末現在で143団体が設立され組織率は60%弱でありますので、今後も組織結成を促進してまいります。
- 原子力災害への備えとしての広域避難計画
県から避難先として示された栃木県内の自治体との間で「原子力災害時における笠間市民の県外広域避難に関する協定」を今年度中に締結するため協議を進めているところであり、この協定の内容を踏まえ広域避難計画を策定してまいります。
- 消防・救急
消防の広域化について、県央地区消防広域化推進研究会の構成7市町による協議を進めており、今年度は消防力の適正配置に係る調査を実施し、3月中に調査結果が報告される予定です。平成29年度はこの調査結果を踏まえ、広域化による消防署の適正配置など消防の広域化に向けた更なる検討を進めてまいります。
- 消防・救急体制
老朽化した消防署の建て替えや人員、消防車両の適正配置の見直しなどによる消防体制の強化、また、高度化する救急業務への対応として、知識や技術向上を図るための研修の充実、新たな救急資器材等の整備などにより救急体制の充実強化を図ってまいります。
- 消防団
地域防災の中核としての体制強化や効率的な運用を図るため、笠間市消防団審議会による「消防団の今後のあり方に関する答申書」に基づき統合再編に向けた地元との協議を進めてまいりましたが、平成29年度は大原地区の3つの分団と安居地区の2つの分団が統合再編する予定であり、今後も機運が高まっている分団から順次統合再編を進めてまいります。
- 防犯対策
平成28年の市内における刑法犯罪件数は556件で前年より137件減少していますが、高齢者を狙った犯罪などが後を絶たない状況であります。犯罪抑止のための防犯カメラの設置については、現在市街地の22箇所に44台を設置しており、平成29年度は新たに10箇所で20台を設置してまいります。防犯灯の整備については、省エネ及び電気料軽減の効果が高いことから一括LED化リース方式への切り替えを進めておりますが、この方式に参加できなかった行政区に対しても交換のための補助などによりLED化を推進してまいります。また、「民間交番あさひ」については、地域の防犯拠点として笠間警察署との連携を密にし、防犯連絡員や防犯ボランティアの協力を得ながら、引き続き地域の安全・安心をサポートしてまいります。
- 交通安全
平成28年の市内における交通事故発生件数は245件で前年より44件減少していますが、高齢者の事故の割合が多くなっている状況であります。65歳以上ドライバーの運転免許の自主的な返納を進めるとともに、運転免許返納者に対しては「デマンドタクシーかさま」回数券の交付などの支援を引き続き行ってまいります。また、小中学生の自転車の安全運転、高齢者の交通事故防止のための出前講座などを実施してまいります。
- 笠間市消費生活センター
地域交流センターともべに活動拠点を移転させました。迷惑メールやスマートフォン有料サイトなどのインターネットトラブル、ニセ電話詐欺といった犯罪などの相談が増加しており、相談機能を更に充実させてまいります。また、近年増加している乳幼児の異物誤飲など家庭内における突発事故防止のための啓発活動などを実施してまいります。
- ごみ処理
ごみの減量化や再資源化など、本市のごみ処理の基本方針を定める一般廃棄物処理基本計画の改定作業を進めており、これまでの処理実績や市民意識調査等から現状を把握し、処理体制の課題を抽出したところであります。平成29年度には長期的視点に立った計画を定め、一般廃棄物の適正処理を図ってまいります。
3.健康増進・福祉の充実
「健康都市かさま」の理念のもと、誰もが元気に安心して暮らせる地域社会を目指し体制を整備してまいります。また、高齢者や障がいを持つ方など様々な支援を必要とする方に対し、医療・介護・福祉が一体的に提供される地域づくりに努めてまいります。
- 子ども・子育て支援
「子ども・子育て支援事業計画」に基づき、この4月に稲田幼稚園といなだ保育所を一体化した幼保連携型認定こども園「笠間市立いなだこども園」を開園し、きめ細やかな幼児教育・保育サービスを提供してまいります。また、待機児童対策について、現在3名の待機児童がおりますが、平成29年度には市内に定員19人の民間保育施設が2施設開園いたしますので解消が図られるものと考えております。放課後児童クラブについては、定員40名の友部第二小学校児童クラブ室を整備してまいります。
- 乳幼児を保育する方へのサポート
新たに「赤ちゃんほっと・ルーム!事業」を展開してまいります。乳幼児がいることで外出を控えてしまう保護者などのため、おむつ替えができるトイレや授乳室がある市内施設を「赤ちゃんほっとルーム」に認定し、気軽に利用してもらうことで子育てに優しいまちを目指します。また、市内のイベントなどにおいてベビーカーごと入って授乳やおむつ交換ができる移動式テントの無料貸出なども行ってまいります。働きながら育児をする方などへのサポートとして、病児保育の充実を図ってまいります。まず、かさまこども園において病後児保育を本年1月からスタートさせました。平成30年オープン予定の地域医療センターかさまには、病児保育のための病児保育室を開設する予定です。
- 小児の予防接種
子どものインフルエンザ発症や重症化を予防し蔓延防止を図るとともに、保護者の経済的負担を軽減することなどを目的として、新たに小児インフルエンザワクチンの予防接種に対する助成を行います。満1歳から中学3年生までを対象とし、1回の接種につき1,000円を助成いたします。
- マル福制度
基本である県の制度を拡充させた本市の独自制度により乳幼児・児童・生徒等が安心して医療を受けられるための支援を行っております。今後も制度の継続を図りながら子育てのための医療費支援に取り組んでまいります。
- 地域医療センターかさま
「地域医療センターかさま」については、地域の医療・保健・福祉のサービス拠点として、平成30年4月オープンへ向け病院機能と行政機能が一体化した施設の整備を引き続き進めてまいります。また、電子カルテの導入や市民アンケート調査で要望の多くあった外来予約制度の導入、回復期病床への転換などによる医療機器の新設・更新を進めてまいります。
- 医療体制
笠間市立病院については、平成29年度は筑波大学からの派遣により医師が1名増員され、常勤医師5名、非常勤医師3名により診療体制を充実させます。在宅医療については、訪問診療の枠を増やすとともに、居宅介護支援事業所「ケアプランセンターかさま」を開設し、在宅での介護を必要とする方々がスムーズに訪問看護・訪問リハビリなどのサービスを受けることができるよう体制を整備してまいります。
- 歯科保健
今年度作成した「笠間市歯科保健計画」に基づき、介護・福祉施設入居者の歯と口の健康維持を図り疾病の重症化を予防することを目的に、施設職員を対象とした口腔ケア知識や技術習得のための研修会を実施してまいります。
- 保健事業
生活習慣病の予防に重点を置いた特定健康診査・特定保健指導の積極的な受診を促すとともに、人間ドック・脳ドック費用の一部を助成することにより、疾病の早期発見・早期治療へと繋げ、健康の保持増進を図り、更には医療費の適正化を目指してまいります。
- 生活保護
生活保護については、長期にわたる景気低迷や高齢化の影響によりこの10年間で被保護世帯が150世帯ほど増えており、それに伴い扶助費の増加傾向も続いております。支援が必要な方に適切な保護が適用されるよう努めるとともに、就労による自立の促進や医療扶助費の適正化、不正受給対策の強化などに重点的に取り組んでまいります。
- 障がい者福祉
平成30年度からの第3期障害者計画・第5期障害福祉計画を策定し、地域で自立した生活を支えるための障害福祉サービス等を充実させてまいります。また「基幹相談支援センター」や「障害者地域自立支援協議会」との連携による相談支援体制の強化や虐待防止、差別解消などにも取り組んでまいります。
- 高齢者福祉
平成30年度からの「第7期介護保険事業計画」の策定を進めるとともに、引き続き医療・介護・予防・生活支援などが一体的に提供できる地域包括ケアシステムを充実させてまいります。また、4月から実施する介護予防・日常生活支援総合事業においては、ボランティアや地域住民など様々な担い手によるきめ細かいサービスの充実を図り、地域の生活支援の仕組みづくりを進めてまいります。さらには、事業の推進役となる生活支援コーディネーターを包括支援センター内に配置し、住民主体の「コミュニティサロン」を開設いたします。
- 認知症施策
認知症初期集中支援チームや認知症地域相談員を配置し、認知症の早期対応と相談支援体制を充実させてまいります。また、民間企業との連携によるスマートフォンなどの通信技術を活用した実証実験を進め、認知症高齢者の見守り体制を強化してまいります。
4.産業の振興
本市の活力ある産業を創出し地域経済を活性化させるため、地域資源を活用した観光施策の充実や商工業、地場産業、農業の振興と担い手育成のための取組を進めてまいります。また、既存の工業団地や公有地への積極的な企業誘致を推進してまいります。
- 企業誘致の状況
畜産試験場跡地西側街区に株式会社モノタロウの物流施設が完成し、この4月から本格操業を開始します。また、稲田石材団地内の中野組石材工場跡地に住宅用建築資材等の加工・販売を行っている株式会社メトーカケフの関東工場の移転が決定し、5月の操業開始に向け整備を進めているところであります。今後も茨城中央工業団地(笠間地区)や畜産試験場跡地をはじめとした事業用地の積極的なPR活動を行い、更なる企業誘致の推進に努めてまいります。
- 観光の振興
笠間観光協会や観光関連団体と連携し、新たなイベントの開発や既存イベント等の充実を図りつつ、観光交流人口の増加へ向けた取り組みを進めてまいります。特に今年は「笠間の菊まつり」が110回目を迎えることから、連絡協議会を中心とした新たな菊まつりイベントへの転換に取り組み、さらなる発展を目指してまいります。訪日外国人観光客の誘致については、これまでも外国語での接客講座やギャラリーロードへの多言語観光案内板の設置などを実施してまいりましたが、住宅の空き部屋を宿泊施設として貸出す民泊についての勉強会を引き続き進めるなど、インバウンド観光戦略を一層推進してまいります。新たな観光施策の展開ですが、北山公園のバーベキュー場及びキャンプ場をこの4月にリニューアルオープンします。また、愛宕山ハイキングコースの玄関口である岩間駅西口から愛宕山ルートへの誘導看板の設置、あたご天狗の森スカイロッジ屋外トイレの改修などを行い、ハイカーや利用者の利便性の向上を図るとともに、これらキャンプ施設やハイキングコース等を利用したプラン開発やPR活動の強化などにも取り組んでまいります。
- 商工業の振興
市内には陶芸作家をはじめ、彫刻家や画家、工芸作家など様々な創作活動を行うものづくり作家が住んでいます。これまでは笠間焼陶芸作家の担い手育成のため家賃、設備購入、研修、創業等に要する経費への補助を行ってまいりましたが、平成29年度は新たに陶芸作家以外のものづくり作家に対しても創業支援を実施します。創作活動のために要する家賃、建物購入、設備購入、創作施設の修繕などの経費への補助制度を創設し、全国からのものづくり作家の移住や創業を促進させ、芸術文化の振興を通じた産業の活性化を図ってまいります。
- 笠間地区建設高等職業訓練校
これまで地域の建築業界における後継者の育成を担ってまいりましたが、近年後継者不足と職人の高齢化が進んでいる状況にあります。建築業の伝統技術を継承する後継者の育成のため、市内の建築・建設業関係組合の協力を得ながら職業訓練校への支援を充実させてまいります。
- 雇用の創出
市内企業とそこで働きたい方とのマッチングのための取組を進めます。平成29年度は若者就職応援プロジェクトとして、学生を対象としたインターンシップの受入れや、就職面接会などを各種団体と連携しながら実施し、市内企業における持続的な人材確保が図られるような仕組みづくりに取り組んでまいります。また、市内で新たに創業したい意欲を持つ方に対しては、商工会との連携により実践的な知識を学ぶ創業塾を開催するとともに、創業資金補助など様々な相談に応じるワンストップ窓口を設置するなど、やる気のある方を応援してまいります。
- 中小企業の支援
円滑な資金調達を図り事業者の負担を軽減させるため、市町村金融である自治金融・振興金融の利子補給及び保証料補給を引き続き実施してまいります。
- 地場産業の振興
「笠間焼」については、県内の国指定伝統的工芸品である笠間焼、結城市の結城紬、桜川市の真壁石燈籠の振興・販売促進のため、茨城県と3つの市が連携して「いばらき伝統的工芸品産業イノベーション推進事業」に取り組んでおりますが、平成29年度は活動指針となる産地戦略ビジョンを策定し、新たに設立させる地域商社による販売促進活動を展開してまいります。
「稲田みかげ石」については、石材組合と連携し、利活用促進のための積極的なPR活動を進めてまいります。また、販路拡大に向けた「いばらきストーンフェスティバル」の開催について支援をしてまいります。
- 農業の振興
新規就農者や後継者に対しては、国・県の制度と市単独の補助制度による農業機械・施設等整備への支援などを行ってまいります。また、就農者に対する総合的な農業経営塾を笠間市農業公社で開催するなど、就農してから定着、経営向上までの切れ目ない支援にも取り組んでまいります。
本市の主要農産物である栗については、その生産拡大と品質・商品体制などの確立のため「日本一の栗の産地づくりプロジェクト」を展開してまいります。まず、地方創生応援税制を活用した「笠間の栗生産拡大事業」については、笠間市農業公社と連携して遊休農地や管理不全となっている畑を集積し、栗畑として収穫可能な状態に整備することにより生産力を高めます。また、地方創生推進交付金を活用した「日本一の栗の産地づくり推進事業」については、様々な需要に応える量、品質、品種・サイズ別出荷を可能とする生産体制の構築や商品の開発などを進めます。
- 鳥獣被害対策
近年イノシシによる農作物への被害が増大しており、特に山間部においては緊急の対応が必要になっています。本年は電気柵等の設置に対する補助対象の拡大により被害防止に努めてまいりましたが、平成29年度は新たに市民がわな免許を取得する際の費用補助や免許取得者に対する捕獲用わなの貸出し、捕獲のために要する費用補助などを行い、猟期中のイノシシの捕獲を推奨してまいります。
- 農地整備
将来の農業生産の担い手を育成し、地域農業の中心的役割となれるよう必要な区画整理や水路、農道等の整備を一体的に行う経営体育成基盤整備事業について、友部中央地区、大渕地区、押辺・安居地区において地元説明会等を行い、地元の意向を確認しながら茨城県の事業採択に向けて推進してまいります。
5.教育・文化の振興
教育行政の推進のため、今年度「笠間市教育振興基本計画」を定めました。「役に立つ人づくり」、「郷土を愛する人づくり」、「心身ともに健康な人づくり」を柱に、教育・文化・スポーツの推進・生涯学習の充実に取り組んでまいります。
- 学校教育
この4月に南小学校、南中学校が一体となった「みなみ学園義務教育学校」を開校いたします。本市における小中一貫教育を推進するモデル校として、小・中学校の一貫性のある指導、特色ある教育カリキュラム等により、子どもたちの個性や能力を伸ばす取り組みを行ってまいります。さらに平成32年度から始まる新学習指導要領に向けて、ICT教育を推進するため「みなみ学園義務教育学校」をモデル校に指定し、タブレットを活用したより分かりやすい授業に取り組みます。
- 英語教育の充実
社会のグローバル化に対応した人材を育成していくため、市内の小学6年生と中学3年生を対象にした英語検定受験料の補助を行っております。速報値ですが、1月21日に実施した英語検定において、小学6年生の受験者134名のうち92名が中学1・2年レベルの5級・4級に合格しており、合格率は68.7%、前年に比べて16.5%上昇という成果が見られました。平成29年度も全校に英語指導助手を配置し、小中学生対象の夏季英語講習会の実施や教員の指導力向上研修などを実施し、英語教育環境の充実強化に努めてまいります。
- 児童生徒のいじめ、不登校、暴力行為、児童虐待など様々な問題行動等への対応
現在スクールソーシャルワーカーを非常勤で3名配置し各小中学校へ派遣しておりますが、3名のうち1名を常勤として教育委員会に配置し、学校と家庭、関係機関等との連携をさらに強化してまいります。
- 学校施設の整備
築後30年を経過している友部第二中学校校舎の大規模改修及びトイレ改修工事の実施設計を行います。また、学習環境向上のため、全小学校の普通教室へのエアコン設置を今年の8月末をめどに進めてまいります。
- 笠間公民館
現在大規模改修工事を実施している笠間公民館については、9月中旬にリニューアルオープンする予定です。リニューアルに合わせ、創立から200年を迎える笠間藩校「時習館」の企画展を開催します。また、生誕200年となる笠間藩士の小野友五郎に関する講演会なども開催する予定です。
- 市立図書館
市民の皆様の高い利用率により人口8万人未満の公立図書館として4年連続で貸出数全国1位となりました。平成29年度においても年末の12月29日、30日を特別開館とするほか、地域密着型イベントなどを実施してまいります。また、市内小中学校等への資料の貸し出し支援、書架の配置や特集の工夫、ツイッターなどを利用した情報発信などを行い、図書館の更なる利用促進を図ってまいります。
- 筑波海軍航空隊記念館整備事業
地方創生関連交付金を活用し、希少な戦争遺構である筑波海軍航空隊旧司令部庁舎の保存と筑波海軍航空隊記念館の整備を進めてまいります。また、展示内容の強化を図るため、ICT技術を活用したコンテンツの開発、映像ガイドやスマートフォンを利用した映像パンフレットの作成などを行ってまいります。
- 笠間城跡
国史跡の指定を目指し調査を進めている笠間城跡について、平成29年度は地中レーダー探索による笠間城本丸跡の調査を行うとともに、これまでの調査内容を笠間歴史フォーラムにおいて報告する予定でおります。
- 文化財公開事業
公開する文化財の数を増やすなどの取組を進め、より多くの方に来場いただき、貴重な文化財に対する意識の醸成を図ってまいります。
- 市民運動会
市民相互のふれあい、地域や仲間との連携がさらに深まったと毎年好評をいただいております。平成29年度においても地域や世代の垣根を越え多くの方が参加できるよう、競技種目等に工夫を凝らし実施してまいります。
- 第74回国民体育大会「いきいき茨城ゆめ国体」
会期が平成31年9月28日から10月8日の11日間に正式決定しました。本市は正式競技である「軟式野球」、「クレー射撃」、「ゴルフ(少年男子・女子)」の3競技とデモンストレーションスポーツとして開催する「合気道」の会場になっており、今後は実行委員会を組織して各種計画・要項等の策定を進めるとともに、庁内推進体制の強化を図ってまいります。また、軟式野球競技の会場となる笠間市民球場については、平成29年度にスコアボードをLEDタイプへ改修し、平成30年度に内野グラウンド整備を行うなど年次計画で整備を進めてまいります。
- 2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた取組
昨年6月にタイ王国のホストタウンとして登録されましたが、今後もタイ王国ゴルフ選手団の事前キャンプ誘致活動の推進を図りながら、その他の国や地域に対しても市のスポーツ施設等を活用した事前キャンプ誘致活動を行ってまいります。
6.地域づくり
将来にわたり持続するまちづくりのためには、市民と行政が一体となって地域の様々な課題解決に取り組むことが必要です。地域の賑わいを創出するため、地域コミュニティの活性化、移住・定住化の促進、女性の活躍応援などの取組を進めてまいります。
- 地域交流センターともべ
本年1月に地域の交流活動の拠点としてオープンした「地域交流センターともべ」については、地域や市民活動団体等の代表者による運営協議会からのご意見をいただきながら、誰もが気軽に利用できる交流施設として利用者の増大を図ってまいります。また、「地域交流センターいわま」についても指定管理と協議会による運営方式をとりながら、地域の交流活動拠点として、また、愛宕山への観光拠点として12月のオープンを目指してまいります。
- 堂ノ池周辺整備事業
「エコフロンティアかさま設置に伴う地域振興及び環境保全等に関する協定書」に基づき、福田地区内にある「堂ノ池」を世代や地域を越えた交流による地域振興が図られるよう、平成29年度は集会所やバーベキュー施設などを整備し、平成30年3月の完成に向けて事業推進してまいります。
- 地域コミュニティの活性化
地域活性化のため独自の取組を行ってきた自治会や行政区等に対し「地域コミュニティ創出モデル事業」による支援を実施してまいりましたが、平成29年度は人口減少・少子高齢化により複雑化する地域の課題解決の糸口を探すため「地域課題解決支援モデル事業」を創設し、モデル地区を選定して、その地域における様々な課題解決のため財政的、人的支援を行ってまいります。
- 地域おこし協力隊
現在4名の隊員が地域の活性化を目的に、空き店舗を活用したコミュニティカフェ等の運営、ノルディックウォーキングによる健康づくり支援、農業振興のための商品開発などの活動を行っております。今年度1名の隊員が任期満了となりますが、平成29年度は新たに2名の隊員を任用し、5名の隊員で地域の活性化に向けた活動に取り組んでまいります。
- 笠間版CCRC推進事業
笠間市CCRC推進協議会において基本計画案のとりまとめを行い、平成29年度は整備誘導を図るための具体的な事業計画の策定、事業者の募集といった段階に入ってまいります。多世代が交流し、本市の資源を活用した暮らしの提供、また、既存の地域コミュニティにも波及する仕組みの構築など、公民連携での事業推進を図ってまいります。
- 移住・定住化施策
主に首都圏からの移住希望者を対象とした「かさちょこハウス」での移住体験事業について、今年度は2家族の移住につながっており、平成29年度も引き続き実施してまいります。また、首都圏を対象とした交流活動については、これまでも首都圏の学校に通う学生との意見交換会(U活プロジェクト)や東京圏にお住まいで笠間市にゆかりのある方々との交流会(笠間と東京圏をつなぐ会)などを開催してまいりましたが、これらを合同で開催し、忠臣蔵ゆかりの地めぐりなど新たな交流が図られるよう工夫を凝らしてまいります。
- 女性の活躍応援
女性の復職支援や男女が共に働きやすい職場づくりに取り組んでまいりました。平成29年度は地域や職場における女性リーダーの育成、女性の多様な働き方を支援するための取組なども進めてまいります。
7.効率的な自治体運営
より良い自治体運営のためには、市民と行政との間の信頼関係を築くことが何よりも重要であります。市民や議会への説明責任を果たすとともに、必要な情報について迅速に提供し、様々な意見や要望に対して的確に対応してまいります。
- 人材育成
限られた財源と人員の中で市民サービスを向上させるためには、職員一人ひとりの能力を最大限に発揮させることが重要であります。平成29年度は「職員の働き方改革」として、働き方への意識を改め、勤務時間内で集中的、効率的に業務を遂行することで時間外勤務の抑制を図るとともに、職員の健康保持、休暇取得の促進による職務意欲や公務能率等を向上させ、活力ある組織による質の高い市民サービスが提供できるよう事務改善に取り組んでまいります。
- 広報広聴
市民と行政が相互に情報共有していくため、広報紙やソーシャルメディアを効果的に活用し、地域の魅力的な情報から政策的な情報まできめ細やかに発信してまいります。また、市の様々な情報を広く収集し、タイムリーな発信を可能とするため市民記者を選任するなど、新たな広報戦略も進めてまいります。
- 行政運営における情報化の推進
電子申請などのICTを活用した市民サービスの向上、業務改善などに取り組んでまいりました。平成29年度はマイナンバーを活用した子育て支援策や行政サービスの効率化など更なる情報化の推進のため、内閣府のマイナンバー制度担当室への職員派遣などによりICT推進体制を強化してまいります。
- タブレット端末の導入
議会改革の一環として議会主導で進められてきたタブレット端末の導入についてですが、平成29年度からタブレット端末の導入を進め、一定期間の試行を経て、これまでの紙での議案書や各種の行政資料などを電子データ化した議会対応を行ってまいります。また、執行部としても庁内会議等においてICTの活用を進め、議会と一体となって業務の省力化、効率化を図ってまいります。
- 行財政改革
これまで効率的な事務執行や事業費の削減等に努めてまいりました。その結果、地方分権に伴う県からの権限移譲率については法令割合89.8%で県内トップとなっており、大きな成果をあげてきたところであります。しかしながら、人口減少、少子高齢化などの新たな課題により行政運営は一段と厳しさを増していることから、「第3次笠間市行財政改革大綱」に基づき、更なる行財政改革に取り組んでまいります。
- 公共施設の維持管理
平成29年度は笠間市公共施設等総合管理計画における公共建築物の長寿命化や施設の規模、配置等の適正化への具体的な取組内容を示した中期資産管理計画を策定してまいります。また、市が所有する土地で利用計画が無く売却の可能性が高い土地については、宅地建物取引士の資格を持つ方を雇用し個別調査を行うとともに、民間の持つノウハウや情報などを活用しながら処分を進めてまいります。
- 市民センターいわま
庁舎建物の老朽化に伴い本年10月から大規模改修工事を実施します。庁舎1階部分は開庁しながら、2階図書館及び3階公民館部分については休館期間がなるべく短くなるよう調整しながら、平成30年8月の完成を目指してまいります。
- 自治体間の広域連携
県央地域9市町村において「茨城県央地域定住自立圏共生ビジョン」に基づく広域連携の取組をこの4月からスタートさせます。人口減少社会における医療、福祉、地域公共交通などの生活基盤の確保について、今後も広域連携による取組を推進してまいります。
おわりに
先般、笠間市出身の高野公男さんとの厚い友情にあった作曲家の船村徹さんがお亡くなりになりました。心からお悔やみ申し上げます。
昭和31年に高野さんがお亡くなりになられて以来、祥月命日には欠かさず笠間市内の墓前に花を手向けに参られており、高野さんへの大変深い思いに感銘を受けたことを思い出します。そして、この笠間の地は、この様な偉大な先人たちの郷土に対する熱い思いによって育まれてまいりました。
その思いを引き継ぎ、本市の未来へ向けての地域づくりのために議員各位及び市民の皆様と真摯に議論を重ね、より良い市政の運営が図れるよう努めてまいりたいと考えておりますので、ご理解とご協力を心からお願い申し上げます。
問い合わせ先
- 2016年3月1日
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