換地とは
換地(かんち)とは?
農業の基盤である土地や水を確保する「土地改良」の中で、不整形の土地を耕作しやすい形状にし、用排水路や農道の整備などを総合的に実施する「ほ場整備」を行った際に、土地の所有者へ整備された土地を新たに割り当てることを言います。
図1
換地の目的
・ほ場整備事業などの工事により整備した新しい農地の所有者や耕作者を決めること。
・ 工事前に分散していた農地を集めること。(農地の集団化)
・ 農業をやめる人の農地を、やる気があり、もっと農地がほしい農家が使えるようにすること。
・ その地域が必要とする公共用地や施設用地、住宅用地を計画的に生み出すこと。
換地のメリットとは?
・土地の面積や形状を調整し、分散して所有していた農地を統合することで効率的な農業を行えるようになります。
・また、効率的に農業を行えるため、魅力的な条件が整った農地となり、所有者自身が営農を行わない場合においても借り手や買い手を見つけやすくなることから、耕作放棄地の拡大抑制に繋がると考えられます。
・換地を行うことで宅地や施設用地などの非農用地を一カ所に集めたり、地域に必要な公共用地や道路の整備など計画的な開発を行えるため、土地利用の合理化が図れることから、近隣の住民の方にとっても住みやすい地域になると考えられます。
換地処分の主な流れ
主な流れをご紹介いたします。
1.地区界測量
事業計画において定めた事業区域の地区界点を確認して測量し、境界の確認を行います。関係権利者の署名押印した立会証明書が必要となります。一部編入する土地は分筆登記が必要となります。
2.従前地調査
主に従前図の作成や土地登記簿を取得し、調査いたします。
3.換地設計基準の策定
農家の意向を参考にその地区の実情に即した基準を定めます。
図2
4.従前地の土地評価基準及び土地評価
従前の土地と工事後の土地の良い悪いを判定し、比較するための基準を作成いたします。この基準作成後に1筆毎に評価いたします。なお、評価は増減点方式を採用しております。
5.換地計画原案の作成
換地計画のもとになる案で選定用の図面を基に、各農家の換地選定の予定地を書面及び図面に示したものを評価換地委員会が作成いたします。
・換地選定は土地を集団化すること、従前の土地と換地が照応していること、公平な換地配分が行われることが必要です。
・換地設計基準で定めた選定順序で行います。
・公開して同意を得ることになるので、換地が知らない間に決まってしまうということはありません。
・土地の権利に変動が生じたらすぐに事業主体に知らせることが必要です。
図3 【見た目上の農用地】 【権利関係のイメージ】
6.換地計画原案の確定
異議申立てに対応又は調整のうえ、農家又は土地所有者等全員の最終的な承認を得て、確定いたします。確定後に工事着手いたします。
7.事業主体が各人に代わって行う代位登記
土地所有者からの申し出がある場合、事業区域内であれば、主に次のことを代位で行うことができます。
・土地登記簿に間違った住所や移転した住所があれば、正しい住所に更生又は変更の登記を行います。
・一筆の一部が事業区域内の場合は、分筆登記を行います。
・所有権登記名義人が死亡している場合、相続登記を行うことができます。
・抹消登記を行わない又は抹消できない抵当権はそのまま換地の上に残ります。
・抵当権の抹消登記は代位できないので、本人が抹消登記を行うことになります。
・図4で長男の単独所有とする場合は、相続放棄申述書又は遺産分割協議書を提出するか、妻及び長男以外の子どもの特別受益の証明(民法第903条)を提出することになります。提出がない場合は持分相続となります。
図4
8.ほ区測量
工事が完成したほ区(区画)の面積を測定します。換地計画原案で同意した面積と異なる場合があります。
9.一時利用地の指定
工事の完了から換地処分までの間、従前の土地に代わり、暫定的に使用収益(耕作)してもらう土地を定めます。
図5
10.確定測量
最終的な登記に向けて、道路及び水路を含む全ての土地の形状や面積を確定するため、測量を行います。
図6
11.行政界変更
道路及び水路などの変更に伴い、市町村界、大字界、字界の変更が必要で、事前に関係市町村と協議し上申書を提出します。関係市町村は議会の承認を得て、変更を都道府県知事に申請いたします。
図7
12.換地計画書作成
確定した換地計画原案に基づき、換地又は従前の土地を組み合わせ、部分指定を必要とするものついてはこれを含めて「換地設計」、「各筆換地明細」、「清算金明細」及び「換地を定めない土地その他特別の定めをする土地の明細」を作成いたします。
13.権利者会議
換地計画の対象となっている土地につき所有権、地上権、永小作権、質権、賃借権、使用貸借による権利又はその他の使用及び収益を目的とする権利を有する全ての者で組織する会議をいいます。3分の2以上が出席して、その議決権者の3分の2以上の賛成によって議決されます。
14.換地計画の決定
県営 権利者会議で換地計画の議決を受け、県知事が換地計画を決定いたします。
団体営 権利者会議で換地計画の議決を受け、県知事の認可を受けます。
15.換地処分
換地計画の決定の後、公告、縦覧及び異議申立てを行い、換地計画確定後、換地処分を通知し、県知事に処分の公告を依頼します。
16.換地処分の公告
換地処分の公告によって登記簿が閉鎖されるので、一般の登記は換地処分の登記が完了するまで停止されます。換地処分の効力は、不換地はその日限りで消滅し、換地は翌日から有効となります。
17.清算
換地によって、従前地及び換地との間に評価上の不均衡が生じることがありますが、この不均衡を解消するためにやりとりすることをいいます。主に金銭で清算されます。
18.換地処分登記
換地計画に基づいて事業主体が登記申請します。登記が完了すると、登記識別情報を本人に交付します。登記識別情報は合併型のみしか交付されませんので、相続、売買等によって権利証が必要な場合には、従前の土地の登記済証を使用してください。
換地業務で使われる主な用語
●農用地(のうようち)
田や畑、果樹園などの耕作、家畜の放牧、または養畜の業務のための採草の目的に供される土地のことです。
●非農用地(ひのうようち)
ほ場整備事業地区内における農用地以外の用に供する土地のことです。
●従前地(じゅうぜんち)
工事着工前の土地のことです。
●権利者会議(けんりしゃかいぎ)
換地計画を議決するため、関係権利者が組織する会議のことです。この会議を構成する関係権利者は、従前の土地につき、所有権・地上権・永小作権・質権・賃借権・使用貸借による権利又はその他の使用及び収益を目的とする権利を有するすべての者となっています。これらの関係権利者の3分の2以上が出席し、議長を除く出席者の3分の2以上が賛成することによって議決されます。
●換地委員会(かんちいいんかい)
換地における地域の代表者です。委員の役割は、換地における土地の評価や、換地についての各農家などの意見を調整し、公平に定めていきます。
主な業務としては
・換地設計基準(換地の基本方針)の確定
・土地の評価基準及び評価(従前及び換地)
・換地計画原案の作成
・一時利用地指定計画案の作成
・その他、権利者への事業の周知や調整等
●換地設計基準(かんちせっけいきじゅん)
その地区又は換地区ごとの換地計画策定のための準則となるもので、具体的な換地選定(工事後の土地に対し誰にどの土地を配分するかを図面等で表すこと)のための基準や手順をあらかじめ定めておくものです。
●土地評価(とちひょうか)
換地選定、換地計画原案作成、換地計画樹立及び換地清算をするために、従前土地と換地について1筆毎に土地の評価基準に基づき評価することです。
●換地計画原案(かんちけいかくげんあん)
換地設計基準等に基づき、各権利者の換地選定を行い、書面及び図面等に面積、地目、氏名等を表示したもの。なお、換地計画の決定を経ないで工事施工する場合は、換地計画原案を作成し権利者の合意を得たうえで着工します。
●一時利用地(いちじりようち)
区画工事が完了し、農用地等が使用及び収益できる状態(耕作等が可能な状態)になった場合、換地計画原案等に記された換地の取得予定者に通知し、換地処分まで暫定的に使用及び収益させることができます。この土地を一時利用地といいます。
●確定測量(かくていそくりょう)
工事完了後の土地について測量を行い、筆ごとに形状や面積の確定をすることです。
●換地計画(かんちけいかく)
換地処分を行うための計画。土地改良事業施行前後の各土地を表示し、従前の土地と換地との対応関係を規定、それに伴い権利の帰属を決定するものです。
●換地処分(かんちしょぶん)
工事前の区画の土地にあった所有権等の諸権利を工事後の区画の土地に対応させ再編するために行う行政処分で、換地計画で定められた事項を都道府県等の事業主体から各権利者に通知して行われます。これにより従前地の権利は換地に移行します。実際にその効力を生ずるには、換地処分があった旨の公告が必要となります。
●換地処分登記(かんちしょぶんとうき)
換地処分についての知事の公告があった日の翌日から従前の土地の権利関係が換地上に移ります。この権利関係について、換地計画にあわせて登記簿を整理することをいいます。換地処分登記は、不動産登記法の特例として定められた土地改良登記令の規定によって行われます。
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- 2024年12月23日
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