保安林
保安林とは、水源の涵養、土砂の崩壊その他の災害の防備、生活環境の保全・形成等、特定の公共目的を達成するため、森林法(昭和26年法律第249号)第25条第1項又は同法第25条の2第1項の規定に基づき、農林水産大臣又は都道府県知事によって指定される森林のことです。保安林では、それぞれの目的に沿った森林の機能を確保するため、立木の伐採や土地の形質の変更等が規制されます。
保安林の指定
保安林の指定及び解除の権限は、民有林のうち国土保全の根幹となる重要流域にある流域保全のための保安林(水源かん養保安林、土砂流出防備保安林及び土砂崩壊防備保安林)及び国有林の保安林にあっては農林水産大臣、その他の民有保安林にあっては都道府県知事となっています。
地権者の同意を得て笠間市が申請いたします。
所有区分 保安林の種類 流域区分 指定又は解除の権限者
国有林 全ての保安林 全流域 農林水産大臣
民有林 水源かん養保安林 →重要流域内 農林水産大臣
土砂流出防備保安林 ↘重要流域外 都道府県知事
土砂崩壊防備保安林
その他の保安林 全流域 都道府県知事
※重要流域:2以上の都府県の区域にわたる流域その他の国土保全上又は国民経済上特に重要な流域で農林水産大臣が指定したものです。笠間市にはございません。
保安林の役割
森林の役割は、木材を供給するだけでなく、水を蓄え、災害を防ぎ、心に安らぎや潤いを与えるなど重要な働きを担っています。こうした森林の中で、特に重要な役割を果たしているのが保安林です。
保安林の種類
保安林には、その目的によって次の17種類の役割があります。
1 水源かん養保安林
水源地の森林が指定されます。その流域に降った雨を蓄え、ゆっくりと川に流すことで、いつも平均した川の流れを保ち、安定した水の確保に効果を発揮します。
また、洪水や渇水を防止する働きもあります。
2 土砂流出防備保安林
樹木の根と地面を覆う落ち葉や下草が、雨などによる表土の浸食、土砂の流出、崩壊による土石流などを防ぎます。
3 土砂崩壊防備保安林
山地の崩壊を防ぎ、住宅や鉄道、道路などを災害から守ります。
4 飛砂防備保安林
砂浜などから飛んでくる砂を防ぎ、隣接する田畑や住宅を守ります。
5 防風保安林
風の強い地域で、田畑や住宅を守る壁の役割を果たし、風による被害を防ぎます。
6 水害防備保安林
洪水時に、氾濫する水の流れを弱め、漂流物による被害を防ぎます。
7 潮害防備保安林
津波や高潮の勢いを弱め、住宅などへの被害を防ぎます。また、海岸からの塩分を含んだ風を弱め、田畑への塩害などを防ぎます。
8 干害防備保安林
簡易水道など、特定の水源を守り、水が涸れるのを防ぎます。また、きれいな水を供給します。
9 防雪保安林
吹雪から道路や鉄道を守ります。
10 防霧保安林
霧の移動を押さえて、農作物の被害や自動車事故を防ぎます。
11 なだれ防止保安林
なだれ発生を防ぎます。また、なだれが発生したときにはその勢いを弱め、被害を防ぎます。
12 落石防止保安林
落石を斜面の途中で止めたり、木の根によって岩石を安定させたりして、被害や危険を防止します。
13 防火保安林
燃えにくい樹種を配置し、火災の延焼を防ぎます。
14 魚つき保安林
水面に陰をつくったり、流れ込む水の汚濁を防いだり、養分の豊かな水を供給するなどによって魚の繁殖を助けます。
15 航行目標保安林
船舶の航行の目標となって安全を確保します。
16 保健保安林
森林レクリエーションの活動の場として、生活にゆとりを提供します。また、空気の浄化や騒音の緩和に役立ち、生活環境を守ります。
17 風致保安林
名所や旧跡、趣きのある景色などを保存します。
詳細は林野庁のホームページをご覧ください。こちらです。
※なお、茨城県では、防雪保安林、防霧保安林、なだれ防止保安林、防火保安林は指定されていません。
保安林の指定状況
茨城県の保安林は、令和6年3月31日現在で、13種類で56,157ha指定されています。そのうち、水源かん養保安林が最も大きく49,178haで88%を占めています。次いで、土砂流出防備保安林が3,843ha、飛砂防備保安林が1,019ha指定されています。
笠間市では、次のとおり指定されております。
●水源かん養保安林 A=1,094ha
●土砂流出防備保安林 A=747ha
●土砂崩壊防備保安林 A=2ha
●干害防備保安林 A=8ha
保安林の指定状況の照会
保安林の指定状況(指定の有無、保安林の施業要件(皆伐、択伐、禁伐等))を照会する場合は、次の茨城県のホームページにアクセスし、様式に必要事項を記載のうえ、メール、FAX又は郵送で茨城県農林水産部林業課林地保全グループへお問い合わせください。こちらです。
お問合せの際、茨城県から次の注意事項がございますので、お気を付けください。
<注意事項>
1 メール、FAXでのお問い合わせについては、お急ぎの場合は送付した旨電話で連絡をお願いします。
2 郵送でのお問い合わせについては、返信用封筒に切手を貼付したものを同封願います。
3 電話での照会については、対応しておりませんのでご遠慮願います。
4 お問い合わせ後、2~3日程度で回答するよう努めておりますが、場所によっては調査に時間を要する場合があります。その場合はご連絡します。
5 回答した内容は、保安林の指定有無の証明書としての効力はありません。証明書願いについては別途申請願います。
電子メールアドレス:ringyo3@pref.ibaraki.lg.jp
電話番号:029-301-4056
FAX:029-301-4059
郵送〒310-8555 水戸市笠原町978番6
宛先 茨城県農林水産部林業課林地保全グループ宛
保安林の指定による森林所有者の恩典と制限
保安林は、必要な場所に必要な働きを持つようにして配備されることが必要です。保安林の重要性をご理解のうえ、指定にご協力いただきますようお願いいたします。
ここでは、森林が保安林に指定されると、どんな恩典が受けられるのか、またどのような森林の取扱いをしなければならないかをご紹介します。
●恩典
1 税金が免除されたり、減額されたりします。
固定資産税、不動産取得税、特別土地保有税は、課税されません。また、相続税、贈与税は伐採制限の内容に応じて相続税等の評価の際に3~8割が控除されます。
区 分 一部皆伐 択伐 単木選伐 禁伐
控除割合 30% 50% 70% 80%
2 特別の融資が受けられます。
一定の条件を満たしている場合には、長期で低利の資金を日本政策金融公庫から借りることができます。
3 治山事業により森林整備・保育・間伐を行います。
防災上必要な場合は、治山事業によって、公共事業として森林の整備や保育・間伐(本数調整伐)を実施します。
●制限
1 立木の伐採
保安林で立木を伐採しようとする場合には、あらかじめ森林法第34条第1項の規定に基づき、茨城県知事の許可を受けなければなりません。
なお、この場合、指定施業要件として制限の範囲内であれば許可されることになっています。
2 土地の形質の変更など
保安林内で、家畜の放牧や土石・樹根の採掘、開墾その他の土地の形質を変更する行為などを行おうとする場合には、あらかじめ同2項の規定に基づき、茨城県知事の許可を受けなければなりません。これらの行為についても保安林の働きが損なわれない場合は許可されることになっています。
根拠法令
・農林水産大臣が指定できる根拠は、次のとおりです。
【森林法第25条第1項及び第2項】
第25条 農林水産大臣は、次の各号(指定しようとする森林が民有林である場合にあつては、第一号から第三号まで)に掲げる目的を達成するため必要があるときは、森林(民有林にあつては、重要流域(二以上の都府県の区域にわたる流域その他の国土保全上又は国民経済上特に重要な流域で農林水産大臣が指定するものをいう。以下同じ。)内に存するものに限る。)を保安林として指定することができる。ただし、海岸法第3条の規定により指定される海岸保全区域及び自然環境保全法(昭和47年法律第85号)第14条第1項の規定により指定される原生自然環境保全地域については、指定することができない。
一 水源のかん養
二 土砂の流出の防備
三 土砂の崩壊の防備
四 飛砂の防備
五 風害、水害、潮害、干害、雪害又は霧害の防備
六 なだれ又は落石の危険の防止
七 火災の防備
八 魚つき
九 航行の目標の保存
十 公衆の保健
十一 名所又は旧跡の風致の保存
2 前項但書の規定にかかわらず、農林水産大臣は、特別の必要があると認めるときは、海岸管理者に協議して海岸保全区域内の森林を保安林として指定することができる。
・都道府県知事が指定できる根拠は、次のとおりです。
【森林法第25の2条第1項】
第25条の2 都道府県知事は、前条第一項第一号から第三号までに掲げる目的を達成するため必要があるときは、重要流域以外の流域内に存する民有林を保安林として指定することができる。この場合には、同項ただし書及び同条第二項の規定を準用する。
・保安林で伐採する場合、都道府県知事の許可を受けなければならない根拠は、次のとおりです。
【森林法第34条第1項】
第34条 保安林においては、政令で定めるところにより、都道府県知事の許可を受けなければ、立木を伐採してはならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合は、この限りでない。
一 法令又はこれに基づく処分により伐採の義務のある者がその履行として伐採する場合
二 次条第一項に規定する択伐による立木の伐採をする場合
三 第三十四条の三第一項に規定する間伐のための立木の伐採をする場合
四 第三十九条の四第一項の規定により地域森林計画に定められている森林施業の方法及び時期に関する事項に従つて立木の伐採をする場合
五 森林所有者等が第四十九条第一項の許可を受けて伐採する場合
六 第百八十八条第三項の規定に基づいて伐採する場合
七 火災、風水害その他の非常災害に際し緊急の用に供する必要がある場合
八 除伐する場合
九 その他農林水産省令で定める場合
・税金が免除される根拠は、次のとおりです。
【地方税法第348条第2項】
第348条 市町村は、国並びに都道府県、市町村、特別区、これらの組合、財産区及び合併特例区に対しては、固定資産税を課することができない。
2 固定資産税は、次に掲げる固定資産に対しては課することができない。ただし、固定資産を有料で借り受けた者がこれを次に掲げる固定資産として使用する場合には、当該固定資産の所有者に課することができる。
七 保安林に係る土地(森林の保健機能の増進に関する特別措置法第二条第二項第二号に規定する施設の用に供する土地で政令で定めるものを除く。)
・相続税等の評価の際に控除される根拠は、次のとおりです。
【財務評価基本通達123】
森林法その他の法令に基づき伐採の禁止又は制限を受ける立木(次項の定めにより評価するものを除く。)の価額は、113《森林の主要樹種の立木の評価》、117《森林の主要樹種以外の立木の評価》又は前項の定めにより評価した価額から、その価額に、それらの法令に基づき定められた伐採関係の区分に従い、それぞれ次に掲げる割合を乗じて計算した金額を控除した価額によって評価する。
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- 2025年3月31日
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