山口市長のベトナム訪問について(8月21日~24日)
JICA草の根技術協力事業に伴い、山口市長が8月21日から24日までベトナムを訪問しました。
これまでの経過
笠間市は、2015年度(H27)~2017年度(H29)に、市とNPO法人国際農民参加型技術ネットワーク「IFPaT(イフパット)」がベトナムで共同実施する、独立行政法人国際協力機構(JICA(ジャイカ))の草の根協力事業「ベトナム国・中山間地域における農業活性化による農家生計向上事業」を実施しました。
2015年度にベトナム国ソンラ省を訪問し、ソンラ省人民委員会副委員長と協議を行い、本事業を開始しました。2016年度には、ソンラ省政府関係者(文化スポーツ観光局・農業農村開発局)及びプロジェクト関係者6名の研修員を市で受け入れたほか、市職員をベトナムに派遣し、さつまいも加工等の指導を行いました。2017年度には、茨城県立笠間高等学校の教員と生徒を派遣し、ロゴマークを作成したほか、市職員も訪問し、プロジェクトの評価報告会を実施いたしました。次年度からの事業については、一般財団法人自治体国際化協会(CLAIR(クレア))の自治体職員協力交流事業(LGOTP)を活用し、ソンラ省農業農村開発局の職員1名の研修員を市で受け入れました。
その後、新型コロナウイルス感染症の影響により事業実施が延期されていましたが、2022年度~2024年度に再度、JICAの草の根技術協力事業「ベトナム国・中山間地域の少数民族の農村におけるアグリツーリズムを導入した生計向上モデル事業」に採択され、2022年度、2023年度にベトナムからの研修員の受け入れや市職員の派遣を実施しています。
今回の訪問について
笠間市で2015年度から開始した草の根事業も、2024年度でいよいよ最終段階となり、今回、私をはじめ、大関市議会議長、市職員2名、さらには、JICA及びIFPaTの関係者とともにベトナム・ソンラ省を5泊6日(うち機中泊1泊)で本プロジェクトの経過視察のため訪問してまいりました。
1日目(8月21日)は、1日かけてハノイから現地へ向かい移動のみで終了しました。ソンラ省(日本では県に相当)は、ハノイから車で約7時間の山間地帯で人口約130万人となります。その中のソンラ市は、人口約17万人で、産業は農業が中心の高地の都市であります。
2日目(8月22日)は、支援対象となっているソンラ省ソンラ市ボー村の農業施設(ネットハウス栽培)と観光施設(民泊)を見学してきました。農業施設では、ネットハウス栽培の技術支援により、トマト栽培を行っており、100m2で約5万円の収穫の実績を上げていました。民泊施設では、1泊500円から800円の宿泊料金で、日本を含め多くの海外の方が利用しているようです。この民泊施設は、観光センターと併設しており、経営者の方が熱心な取り組みをしていることが、海外からの来訪につながっています。一方で、SNSなどを活用した情報発信が弱く、今後の課題でもありました。
また、午後には、ソンラ省人民委員会へ訪問し、副主席と意見交換を行いました。ボー村の皆さんの取り組みによる事業の成果や今後の人材交流についてお話をさせていただきました。
ボー村の皆さんと集合写真 ハウス栽培の現地視察
民泊施設の視察 ソンラ省訪問(副主席面会)
3日目(8月23日)は、ソンラ省農業農村開発局において、今回のプロジェクトに参加したソンラ省ソンラ市ボー村、JICAやIFPaT等の関係者が集い、事業の成果報告会がありました。
まず、農業関係では、ボー村の村長より「技術支援の結果、ハウス栽培によるトマトやメロンの栽培に成果があり収益の拡大につながった」との報告があり、今後も技術支援の継続の依頼がありました。別の関係者からも、「ネットハウス栽培の導入により年間を通じて栽培が可能になり、収益も増えた」との報告がありました。
ただ、今回の事業でプロジェクトは1つの区切りを迎えます。今後、地元の行政と事業者がどのような取り組みを強化していくのかが課題であります。地元からの継続要望に対して、笠間市としては、人材の受け入れを独自に行うことは可能だと考えています。
次に、観光面では、民泊の経営者から「観光センターと民泊施設を併設した施設整備により、海外からの誘客、特にフランスやイギリス等のヨーロッパのほか、中国や日本からのお客さんが増えた」との報告がありました。
また、「JICA及びIFPaTの支援により、パソコン等の機器整備を行い、管理業務の改善や情報発信に努め、また、ソンラ省全体での観光事業連携ができるようになり、観光関連の収益を上げることにつながった」との報告がありました。
JICAからも、これまでのプロジェクトに対しての評価・総括がありました。さらに、行政側のプロジェクトの一員として私からも「この9年間の事業は大きな成果を上げており、成功事例をもとにソンラ省全体に広げていただきたい」とお願いと感想を申し上げました。
農業及び観光の振興は、笠間市にとっても重要な政策であり、これらを推進していくためには、事業者の皆さんの取り組みに対する強い意志が重要であることは共通していると感じました。
最後に、ソンラ市の副市長より本プロジェクトについて挨拶があり、農産物の生産、販売拡大に対して行政として大変期待しているとのことでした。更に、プロジェクトの維持、他の産業への支援、友好関係構築に対する協力について、依頼の言葉がありました。
成果報告会を終えたのち、ソンラ省のコーヒー会社を訪問し、社長から会社説明を受け、工場を見学し、コーヒーの観光農園を案内していただきました。農園の中にあるカフェではコーヒーの試飲スペースや販売所等が整備されており、笠間市でも栗畑の中にカフェを整備することにより、魅力アップにつながるのではと思いました。実現を目指し検討してまりたいと思います。
事業報告会スピーチ 事業報告会集合写真
コーヒー会社視察 コーヒー会社併設カフェ
4日目(8月24日)は、JICA支援で復活したボー村の地域のお祭りに参加しました。5年ぶりの開催であり、綱引きやゲーム等に参加し、会場全体が盛り上がっていました。どこの国でも地域の伝統文化の継承は大きな課題であります。ボー村は特に村長(省から選任される)のリーダーシップが大きいと感じました。ボー村は女性の皆さんが活動の中心であり、エネルギーを受け取りました。
また、3年に1度行われる先祖に対する慰霊祭が、村の行事として行われており、山中にその様子を見学に行くことができました。豚や鳥、アヒルなどの食物が供えられ高齢者の方が霊を慰める祈祷のようなお祈りをしていました。かなり貴重な神事を見せていただき、ベトナムの風習や歴史を感じることができました。このような地域の伝統を引き継いでいくことがベトナムにおいても難しくなっているとの話もありました。
村祭り前夜祭 村祭り前夜祭集合写真
村祭り綱引き ボー村村長宅にて
今回の訪問を終えて
今回の訪問では、ボー村の村長をはじめ関係者や村民からも歓迎を受け、親切な対応をしていただきました。まさに、これまでのJICA及びIFPaTの支援活動の成果であると感じました。また、笠間市においても研修員の受入れや、ソンラ省への市職員の訪問、海外交流等の貴重な体験をさせていただき、大変勉強になりました。今後の行政としての各分野の振興に役立ててまいります。
(尚、今回のプロジェクトの経費はJICAの予算により行われました。)
笠間市長 山口 伸樹
問い合わせ先
- 2024年8月28日
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